「つながらない権利」とは、勤務時間外や休日に、仕事関連のメールや電話への対応を拒否できる権利のことである。世界各国で法整備が進んでいることを受け、日本でも少しずつ人々の関心を集めつつある。前回の記事「つながらない権利、世界各国が法制化 日本は動きなし」に続き、本記事では「つながらない権利」を尊重する上でのマネジメントの注意点を紹介する。
リモートワークはいつでもどこでも働くことができてしまうが故に、公私の区別がつけづらく、それが心身の負担につながることを指摘してきた。とはいえ、一概に「夜間や休日に働くべきではない/連絡してはいけない」と主張しているわけではない。
私が勤務するニットのメンバーの中には、育児や家事と両立しながら働く人や、副業として働く人も多い。それぞれの事情に応じて稼働時間は異なり、早朝や夜間・休日にあえて稼働することもある。メンバーの約2割は海外在住で、日本との時差の関係で相手の夜間帯にチャットを送らざるを得ない状況も日々発生している。「何時から何時までのチャット送信は禁止」という単純なルールを設けることができない。
その代わり、つながらないために個人でできることや相手を思いやることはできる。例えば、自分のチャットプロフィルに「9時~17時稼働」「7月25日~30日休み」などとコアタイムや休暇を明記することで、自分の対応可能時間を周囲に知らせることができる。相手の就業時間帯以外には返信が来なくて当たり前であることをお互いに理解していれば、自ずと「つながらない権利」を尊重する風土ができあがる。
当社の社員の多くは時間に捉われない柔軟な働き方ができることに魅力を感じ、このような働き方を選択している。大切なのは「自分らしい働き方」を阻害することなく、それぞれのプライベートも尊重できるような一人ひとりの意識や社内の雰囲気の醸成こそが重要なのではないだろうか。
「個の時代」と言われるこれからの時代は、リモートワークの可否や業務時間外の「つながり」に関する対応が各企業の採用活動にも影響すると私は考えている。状況は職種や業種によっても異なるだろうが、「つながらない権利」の広がりに象徴されるように、プライベートを尊重する企業の姿勢は今後の人材採用において一つの重要なポイントになるだろう。
最終更新日:8/2(火)11:31 日経BizGate