長谷川町子原作によるテレビアニメ番組「サザエさん」(フジテレビ系)と、海鮮のうま味がたっぷりと詰まった日清食品のカップラーメン「カップヌードル シーフードヌードル」がタイアップしたテレビCM「サザエさんと海ラップ篇」が7月20日から放映されている。サザエさんの音頭で、大勢のラッパーたちが海辺でテンポよくクールにラップを繰り広げる、〝国民的な人気者〟同士による異色のコラボCMは、SNS(会員制交流サイト)などでも話題となっている。
■サザエさんがナビゲート
「夏はシーフードでございまーす」
CM冒頭、タンクトップにミニスカートと涼しげな姿でサザエさんが登場。このセリフは、テレビアニメ番組「サザエさん」のオープニング曲(歌:宇野ゆう子)でお馴染みの名セリフをもじったものだ。
「外アッチーから家で食うわ」「レッツ辛口レッドだわ」「タコみたいな具 実はイカ」
CMでは、大人から子供までそれぞれ国籍が違うと思しきラッパーたちが、海辺で体を海藻のようにくねくねと揺らしながら、韻を踏んだ印象的なフレーズを次々と繰り出す。
歌詞の内容は、日清食品の人気商品「シーフードヌードル」(税別214円)と、唐辛子と粗びき黒こしょうでアクセントを加えたスープを特長とする夏季限定の辛口タイプ「レッドシーフードヌードル」(税別214円)がいかに美味しいかを〝情感たっぷり〟に歌いあげたものだ。ラップの楽曲については、テレビアニメ番組「サザエさん」のお馴染みの劇中曲をアレンジした。
■着想は海つながり
日清食品ホールディングス広報部によると、今回のコラボレーションは、「サザエさん」と「シーフードヌードル」の双方が「海」に関連していることから相乗効果を期待して実現したという。サザエさんの登場人物は、サザエ、カツオ、イクラ、タラ、マスオ、波平、舟、アナゴさんと、海にちなんでいる。一方、シーフードヌードルには、エビやイカなど海鮮の具が詰まっている。
日ごろ挑戦的なラッパーたちが披露した歌詞には、「シーフードヌードル」に隠された秘密が盛り込まれている。タコみたいな具は実はイカであり、半円形の赤地に白く「NISSIN」と表記された日清食品のロゴは「家」の形にアレンジされている。CMのラストでロゴが「ぐにゃり」と縦や横に伸縮する様子は、「サザエさん」のエンディング曲「サザエさん一家」(歌:宇野ゆう子)のラストに登場する家の映像を意識したものとなっている。
■意外性を発見する楽しみ
このCMがSNSなどで話題となっている理由について、広報やパブリック・コミュニケーションなどに詳しいグロービス経営大学院教員、難波美帆さんは、視聴者自身に楽しんでもらう緻密な仕掛けがあると指摘する。
難波さんは「誰もが見たら食べたくなるザ・国民食ラーメン。見せたら勝ったも同然、とはいえ、SNSでも定番ネタ。人気ゆえにライバルも割拠する。人気長寿キャラクター『サザエさん』を起用しただけでは、目を引くにはまだ足りない」と指摘。その上で「視聴者を振り向かせ良い印象を残すには、意外性と納得が大事」と強調する。
では、ラップに意外性があるのか。ラップを盛り込めば、視聴者は楽しいと感じるのか。難波さんは明確に否定。「社会への主張と反抗が起源だったラップも、いまや若者に寄り添う定番ミュージック。ラーメンとラップは若者にとってはむしろ馴染みがいい。どれも人気だが、3つ一緒だと意外に思える『ラーメン』『サザエさん』『ラップ』が、『シーフードつながり』と、ラップミュージックのフローでうまくまとまる。その意外性を発見するのが楽しいのではないか」とみている。(高橋天地)
最終更新日:8/1(月)22:14 産経新聞