飛行機の離陸前、機内での安全について、客室乗務員が紹介したり、ビデオが流れたりする。機内にモニターがない小型機などは、客室乗務員が酸素マスクや救命胴衣の使い方や緊急脱出の方法などを、乗客の前でデモンストレーションする。
近年は、機内のモニター画面でビデオで流すことが多い。当然ながら乗客はこの内容をしっかり見ないといけない。
同じ航空会社に多く乗り続けると、同じビデオを何度も見る羽目になる。しかも、どの航空会社も基本的な内容は同じだ。もうわかり切っていると乗客は思っていても、航空会社は緊急時を想定し、乗客に毎回しっかり見てもらう必要がある。
その
「いかに見てもらうか」
に重点を置き、ビデオを制作する航空会社が近年増加中だ。単調になりがちな内容に工夫を凝らす傾向があるのだ。
例えば、誰もが知る有名人を登場させたり、映画の最新作とコラボレーションしたりする航空会社も。機内のみならず、YouTube上で公開し、誰でもいつでも見られる機会も増えている。
映画の最新作とコラボレーションしたことで有名なのが、ニュージーランド航空だ。
映画『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』の各3部作は、ニュージーランド出身のピーター・ジャクソン監督が手掛け、国内各地がロケ地となった。映画の出演者も参加し、ロケ地がビデオの舞台となるなど、まるで映画の続きを見ているかのような完成度の高さだった。
ほかにも、ラグビーの代表チーム「オールブラックス」や先住民に焦点を当てた内容など、同社のビデオは毎回刷新されるたびに世界中で話題となっている。
その国ならではの魅力を発信する航空会社もある。
シンガポール航空は、安全の内容をしっかり伝えるとともに、国内にある観光名所をさりげなく紹介。同国の出発便と到着便で、乗客目線で内容が異なるのも特徴だ。
また、エールフランス航空も毎回センスあふれる内容だ。最新ビデオにはパリのオペラ・ガルニエ、ヴェルサイユ宮殿、コート・ダ・ジュールなどが登場する。まるでミュージカル作品のような仕上がりになっている。エジプト航空では、古代エジプトの世界がテーマだ。
日系エアラインは主に昔から、機内で乗務員が紹介する定番パターンを踏襲する。その流れが一時期変わったのがANAの「歌舞伎」だった。
2018年12月から登場し、日本の伝統芸能を用いた内容は、外国人はもちろん、日本人にも好評を博した。筆者も何度も見るうち、歌舞伎に興味を持つキッカケとなった。現在は以前のパターンに近い内容に変更された。一方、スターフライヤーは、以前は忍者、現在はロボットキャラクターが登場する独自路線を進む。
最終更新日:7/27(水)15:29 Merkmal