出社したくなる?企業の取り組み

7月7日に不動産大手「三鬼商事」が発表した東京都心の空室率は、6.39%でした。6月の東京都心のオフィス空室率は、6.39%でした。コロナ前は1%台でしたが、感染拡大とともに上昇を続け、去年6%を突破しました。ただ、この4か月はほぼ横ばいと、オフィス需要の減少に歯止めがかかりつつあります。

コロナ後を見据え、企業は働き方を模索していて、NTTがテレワークを基本とする一方、ホンダは出社を基本とするなど、対応が分かれています。オフィス自体の在り方が問われるなか、その価値を見直し、出社したくなる仕掛けに力を入れる企業を取材しました。



東京・渋谷駅前の複合施設にオフィスを構えているのが、グーグルの日本法人です。窓からは東京の景色を一望できます。さらに会議室の入り口には「ゴジラ」に「用心棒」という文字が。海外出身の社員も多いことから、日本に親しみを持ってもらえるような名前を付けたといいます。

しかし、2019年10月に移転してきてから半年後、新型コロナの感染が拡大。コロナの期間は社員の健康・安全を第一にしたリモートワークでした。その後、感染者数などに改善が見られたことから6月、社員に出社を求める方向に舵を切りました。その際に新たに導入したのがハイブリッドワークです。

「週3日、会社に来ることを推奨し、週2日は自宅、リモートワークを推奨。グーグルは創業当時から人が集まり会話して、チームで一緒に仕事をすることが、より良いアイデア、より高い生産性につながっていくと信じている会社」(グーグルの谷本美穂さん)

コロナ禍を通して分かったのは、社員が働き方の選択肢を求めていることです。そのため出勤とテレワークをかけ合わせたハイブリッドワークを導入し、出社の回数などは部署ごとに委ねることにしました。

「できれば会社に来てもらい会話をする、チーム作りをする時間をとってほしい。それがメリットになればと思っている」(谷本さん)

一方、半年前に本社を移転したスタートアップ企業「アタマプラス」を訪ねると、オフィスとは思えないようなエントランス。ベンチやスケートボードなども置いてあります。公園をテーマとした内装で、オフィスを縮小する企業もある中、この会社ではあえて面積を1.6倍に拡大しました。

「言われたから来るのではなく、自律的に来たくなるオフィスを目指している」(アタマプラスの杉本悠さん)

オフィスには従業員が出社したくなる仕組みが散りばめられています。まず土足禁止。脱いだ靴は下駄箱に入れます。

「なんだか学校の下駄箱のような懐かしい感じがします」(角谷暁子キャスター)

人工芝のフロアを進むと...。

「ここは公園のスタジアムをイメージしている。使い方は社員一人ひとりに任せている」(アタマプラスの杉本さん)。

このエリアでは寝転びながら仕事ができるほか、部署を超えた会議など、用途や気分に合わせて自由に使うことができます。社員も「形式ばって会議に臨むとか、形を大切にするというよりは、過ごしやすい空間にいることによって、リラックスした状態で臨める」と話します。

この会社でもテレワークと出社のハイブリッドワーク。週1日以上の出勤というルールだけですが、およそ200人の社員のうち出社率は4割ほどだといいます。

カウンターにはお菓子を買えるコーナーも。実はあえて執務エリアから少し離れた場所に設置しています。他の部署の人などとの会話の機会を作り出すためだといいます。

「『きょうは家で仕事する』とか自由がきくのでやりやすい。家で仕事するよりも、コミュニケーションがとりやすいし、気分転換もすぐできるので出社したい」(社員)

オフィス回帰の動きを取り込もうと、ビルオーナー側も出社したくなる仕掛けづくりを始めています。

東京駅にほど近いビル「常盤橋タワー」。その鍵を握るのは「MY Shokudo」というフロアです。一見、酒場風のレストランなどが連なる、およそ500席のスペースですが、実はここは飲食店ではなく社員食堂。特徴はビルオーナーの三菱地所が、入居企業のために自ら運営している点です。異例の取り組みを始めたのは何故なのでしょうか。

「単体で見れば飲食店を入れた方が収益は上がると思うが、入居を決めてもらう時の1つの要素になっている」(三菱地所の谷沢直紀さん)

設備や運用にかかるコストの点から、自前で社員食堂を用意できる企業は限られます。そのため社食はテナント企業を呼び込むキラーコンテンツになると考えました。実際、このビルの入居率はほぼ100%だといいます。

化学メーカーの「クラレ」は、社員食堂が入居の決め手となった企業の一つです。

「今は出社率がかなり低いので、自前で維持するのはさらに大変。自前で社員食堂を持たずに社員食堂が持てるので大きな魅力だった」(クラレの先﨑茜さん)

午前11時半ごろ、そのクラレの社員が社員食堂にやって来ました。注文はアプリから。並んだり、店員と接触したりすることなく料理を受け取れるなど、昼食にかける時間の短縮にもつながるといいます。

「出社時は毎回ここに通っている。エレベーターでの移動だけで来られるのが助かる」(クラレの社員)

さらにキッチン付きのホールも併設。入居企業の従業員が歓送迎会やチームビルディングなどに利用できます。

三菱地所は2027年度に竣工する予定の新たなオフィスビルでも、社員食堂を開設予定。ビルオーナー側もより付加価値が高いオフィス作りが求められていくと強調します。

「食堂が全てではないが、テナント従業員に来てもらうための企画が大事になってくる」(三菱地所の谷沢さん)

※ワールドビジネスサテライト

最終更新日:7/11(月)17:03 テレ東BIZ

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6432298

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