地域の特産品を扱う「アンテナショップ」は、現地に行かなくても地方の品物が手に入る、地方の広告塔のような存在。かつては都道府県の店舗が主流だったが、最近はより細分化された“市町村アンテナショップ”が注目を集めているという。(清談社 真島加代)
● 自治体アンテナショップの 都内店舗数が過去最高に
地方の特産品を取りそろえて、都市部に店舗を展開する「アンテナショップ」。以前は、47都道府県のアンテナショップが一般的だった。しかし近年では、北海道美瑛町「丘のまち美瑛」や兵庫県洲本市の「日本橋室町 すもと館」などの“市町村アンテナショップ”が続々とオープンしている。
「5年前にスタートした『地方創生』以降、さまざまな面で地方が注目を集めるようになりました。同時に、地方も都市部に住む人たちに向けて、より熱心に“地域の魅力発信”に取り組んでいますね」
そう話すのは、一般財団法人地域活性化センターの広報室長・畠田千鶴氏。その地域の魅力発信の一端を担っているのが、アンテナショップだという。
「都道府県や市町村のアンテナショップは、都会から地方への“送客口”として機能しています。昔は、主に特産品を売るだけの場所でしたが、現在は観光や移住、ビジネス支援などのプロモーションの場へと変化しています。さらに、東京五輪の開催が決まってから、インバウンド客にも対応できるようにリニューアルしたり、新設したりする店舗も増えています」
● 新型コロナの影響で 利用シーンに変化も
畠田氏のコメントにもあった「dining gallery 銀座の金沢」にも話を聞いた。同店では金沢の工芸品を展示するギャラリースペースと、金沢の料理を器とその“しつらえ”とともに楽しむダイニングスペースが併設されている。
「当店は金沢クラフトや食文化など、金沢固有の文化を発信する“ゲートウェイ”の役割を果たしています。また、首都圏で活躍する金沢出身の人々の集いの場にもなっていて、首都圏における金沢の『ベースキャンプ』としても活用されていますね。四季折々には『茶会』や『伝統芸能』などの体験型のイベントを開催し、来店するだけで金沢を感じられる仕掛けをたくさん用意しています」(銀座の金沢・広報担当者)
客層は幅広く、ギャラリー利用は女性客が中心。オンライン販売の注文は、沖縄から北海道まで全国各地から寄せられるという。
「ただ、年に1回ギャラリーで開催している九谷焼の『赤絵細描(あかえさいびょう)』にまつわる展示は、男性のお客さまのほうが多く感じます。時間をかけて赤い線で描かれた、精巧で緻密な作品に引かれるようです。当店でとっておきの酒器に出会い、ご自宅で癒やしの時間を過ごしているのかもしれません。日常で使える器の展示も人気ですが、強い個性を持つ作家の個展を開くと、ファンが増えるきっかけの場にもなっています」(同)
実際にギャラリーに訪れた人々は、金沢の工芸品の多様さに驚くという。「銀座の金沢」は、工芸作家とファンをつなぐ懸け橋になっているのだ。
「一方のダイニングでは、通常の食事利用のほかに、金沢芸妓の舞と料理をお楽しみいただくイベントも開催しています。男性グループやご夫婦で参加される方が多い印象です。これからは、カニのシーズンに入るので、お問い合わせが増えていますね」
最終更新日:12/17(木)20:31 ダイヤモンド・オンライン