宅配便大手「ヤマト運輸」の名古屋市内の配送センター長だった男性社員(当時45歳)=同市=が2016年4月に自殺したのは過労が原因として、妻が国に労災認定を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は16日、「自殺は業務に起因する」として労災と認定し、国の遺族補償年金などの不支給決定を取り消した。
妻が労災として遺族補償年金と葬祭料の給付を申請したが、名古屋北労働基準監督署は16年11月に支給しないと決定していた。
判決で井上泰人裁判長は、自殺の4カ月前の時間外労働が月130時間を超えており、「長時間労働で心身の疲労を蓄積させ、精神障害を発症した16年3月下旬にはストレス対応力が低下していた」と判断した。
さらに16年2~3月、男性自身と部下2人が配送中に相次いで物損事故を起こしたことに触れ、「同社では、事故は安全会議を開いて当事者の乗務を一定期間停止させるなど重い出来事。男性が実際の損害や過失以上に責任を感じ、勤務に不安を覚えても無理はなかった」と指摘。自殺は業務に起因すると結論づけた。
妻の代理人の岩井羊一弁護士は「会社の特徴を見て、人身事故でなくても心理的負荷になったと判断した点が踏み込んだと言える」と判決を評価した。
妻は岩井弁護士を通じ、「ヤマト運輸は仕事が原因で主人が亡くなったことを認め、謝ってほしい」とのコメントを出した。
名古屋北労基署は取材に「判決を精査し、関係機関と協議をして対応する」、ヤマト運輸は「訴訟当事者ではないのでコメントは控える」とそれぞれ話した。【井口慎太郎】
最終更新日:12/16(水)23:08 毎日新聞