悪質自転車 ドライバーの自衛策は

ここ数年でドライバーの大敵である「自転車の無法者」が増えている。不安定なお年寄りの自転車、傍若無人なロードバイク、マナーが欠落したママチャリ、子ども自転車など、ドライバーがドキッとさせられる自転車は実に多い。また、自転車とクルマとの事故もコロナ禍以降、増加傾向にある。



 そして、昨今増えているのは、クルマの走行妨害を故意に行う「悪質な自転車」だ。こうした輩が増えている今、ドライバーも自衛策を講じる必要がある。

 ※文中の一部に法規に関する誤りがありましたので、謹んで謝罪し訂正いたします。申し訳ありませんでした。ご指摘いただきありがとうございました。正しくは以下本文および文末の差し替え表をご参照ください。(2022.06.22 17:10)

 文/鈴木喜生、写真/写真AC

道交法に15番目の項目「自転車の妨害運転」が加えられたのは、故意に違反行為を行う、異常とも言える自転車を規定するためだ。しかし、積極的に危険行為を働く自転車でなくても、クルマの通常運転に害を及ぼす自転車は少なくない。

 ドライバーの方々にはぜひここで、「自転車を対象にした危険行為の規定」の、その他14項目も再確認していただきたい。常識とも言えるこれらルールを犯す自転車は、その時点ですでに悪質と言え、健全なドライバーに不利益をもたらす可能性がある。

 筆者が自転車雑誌の編集人を務めていた時、警視庁に出向き、道交法の同条文に関して取材をしたことがある。それら項目を要約したものをご紹介したい。

 【自転車を対象にした危険行為の規定】
1.信号無視
2.自転車の通行禁止道路の走行
3.歩行者専用道の自転車による走行
4.車道の右側や、右側路側帯の走行
5.自転車が走行可能な路側帯で、歩行者を妨げる走行
6.警報機が鳴っている遮断踏切への立ち入り
7.信号のない交差点で、左から直進するクルマの走行に対する妨害
8.交差点を直進、または左折しようとするクルマの走行に対する妨害
9.環状(ドーナツ状)交差点を走行するクルマの妨害
10.一時停止線の無視
11.自転車も走行可能な歩道での歩行者妨害
12.ブレーキ不良やその装置がない自転車での走行
13.酒酔い運転
14.スマホ、傘などを使用しつつ走行する安全運転義務違反

 特に誤認されやすいのが「4」だ。道交法(第17条)では、「車両は、道路の中央から左の部分を通行しなければいけない」とある。これに関しては、クルマ、自転車ともに認識が薄く、トラブルの原因にもなりやすい。なので少々ご説明したい。

最後に、「過失割合」についても触れておきたい。

 事故に遭遇したドライバーにとって、時には理不尽にも思えるのがこの過失割合だろう。自転車よりもはるかに大きな力を持つクルマのドライバーには、事故に対して大きな責任が問われることになる。

 この過失割合には基準値がある。例えば、クルマが西東方向へ、自転車が南北方向へ向かっていたとする。交差点においてクルマの信号が赤、自転車の信号が青、つまりクルマが信号無視をして事故が発生した場合には、その過失割合は原則としてクルマが「10」、自転車が「0」となる。

 逆に、同じ条件下でクルマの信号が青、自動車の信号が赤、つまり自転車が信号無視をした場合には、クルマが「8」、自転車は「2」だ。自転車側に根本的な非があったとしても、ドライバーには前方不注意などの過失が問われ、その非が重いとされてしまうのだ。

 筆者の親の場合は、「信号のある交差点」で事故に遭った。自転車に乗っていた親が青信号で交差点に入った際(違反事項なし)、対向方向から来た右折車にはねられたのだが、その過失割合は自転車の親が「1」、クルマが「9」だった。このケースの基準値だ。

 しかし、クルマのドライバーが「ナビを見ていた」と証言。その過失によってドライバーに「プラス1」が課され、さらに親が高齢だったために「マイナス1」となり、結果、クルマが「10」、自転車の親が「0」となった。

 人身事故では絶対的にクルマが不利になる。事故の原因が自転車の危険走行にあったとしても、多くの過失はドライバー側に課せられるのだ。

 ともあれ、まずは挙動のおかしい自転車には近づかないようにしたい。そして前方確認を徹底し、どんな事態にも対処できるようスピードは抑えたい。ドライブレコーダーも必須だ。それ以外にドライバーにできることは、道交法を十分に把握して、事態を客観的に俯瞰する目を持つことだろう。

 ※記事修正歴

 【写真3枚目のキャプション修正前】
写真のようなケースでは、自転車は原則として路側帯を通行しなければならない。しかし、ご覧のようにそこは自転車が安全に走行できる状態ではない場合が多く、必然的に車道を走る自転車が多くなる
【修正後】
前方には車道の中央を走る自転車、路側帯あり、中央線は追い抜き禁止。こんな時、あなたがドライバーだったらどうする?

 【同節7ブロックめ修正前】
ただし、こうしたケースのポイントは、路側帯(自転車専用レーン)があるか否かだ。片側1車線以上の道路に「路側帯(白い実線が1本)」がある場合、自転車が通行できるのは路側帯に限定されている。また、車線(車両通行帯)と路側帯を分ける実線が2本の場合は、その路側帯は歩行者専用だ。つまり自転車は走行することはできない。こうしたルールをドライバーも認識しておきたい。
【修正後】
こうしたケースの場合、路側帯(自転車専用レーン)があるか否かもポイントになる。片側1車線以上の道路に「路側帯(白い実線が1本)」がある場合、自転車は車道とともに路側帯も通行できる。また、車線(車両通行帯)と路側帯を分ける実線が2本の場合は、その路側帯は歩行者専用だ。つまりそこを自転車は走行することはできないので、やはり車道のみを走行することになる。こうしたルールをドライバーも認識しておきたい。

 【納得いかないことも多いが…クルマにとって圧倒的に不利な「過失割合」4節め修正前】
逆に、同じ条件下でクルマの信号が赤、自動車の信号が青、つまり自転車が信号無視をした場合には、クルマが「8」、自転車は「2」だ。自転車側に根本的な非があったとしても、ドライバーには前方不注意などの過失が問われ、その非が重いとされてしまうのだ。
【修正後】
逆に、同じ条件下でクルマの信号が青、自動車の信号が赤、つまり自転車が信号無視をした場合には、クルマが「8」、自転車は「2」だ。自転車側に根本的な非があったとしても、ドライバーには前方不注意などの過失が問われ、その非が重いとされてしまうのだ。

最終更新日:6/22(水)18:02 ベストカーWeb

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6430266

その他の新着トピック