食べ放題で躍進 焼肉きんぐの課題

この2年以上のコロナ禍で、すっかり消費者の生活習慣は変貌。外食に対する感覚も大きく変わってしまった。そんな中でも、目覚ましい好調ぶりを見せるチェーン店が焼肉業界にある。株式会社物語コーポレーションが運営する「焼肉きんぐ」だ。



 6月9日に発表された『2022年6月期5月度 月次売上高前期比(速報値)』を見ても、その勢いは明らかだ。

 飲食業界全体で客足が回復傾向にあった4月、5月。同社「焼肉部門」の客数は、前年対比で118.0%、131.5%の伸び。売上高もそれに比例して、120.8%、138.1%の大躍進を見せている。

 少し遡った情報だが、近々の同社の決算状況(2021年6月期)も見ておこう。売上高は約640億円。営業利益約25億円、経常利益約42億円のプラスになっている。

 これがいかに“圧倒的成長”と呼べるのか。それは絶対的なライバル、かつての焼肉業界の雄「牛角」の苦戦を見れば分かりやすい。

 牛角を運営する株式会社レインズインターナショナルの決算状況(2021年3月期)は、売上高約409億円。営業利益、経常利益は共に約57億円、約82億円の大幅なマイナスとなっている。

 もちろん、これだけでは単純に評価はできない。我々外食コンサルタントは店舗売上評価をする際に大切な経営指標「坪売上(一坪当たりの売上)」で判断してみよう。

そもそも、焼肉きんぐは牛角と比較してこそ好業績が際立つが、営業利益率は4%ほどしかない。優良企業であれば営業利益率は5%以上は欲しいもの。売上の伸び率を考えれば、やや不安の残る数値だ。

 さらに問題なのが、和牛の飼料価格の高騰だ。原油の高騰はもちろんのこと、ロシアによるウクライナ侵攻の影響は、時差でじわじわと飲食業界に追い打ちをかけてきている。

 食料自給率の低い日本は輸入食材だけでなく、国内で生産する和牛の飼育に必要な飼料の多くも輸入に頼っているのが現状だ。農水省によれば、直近3月の肥育牛用の配合飼料の工場渡し価格はすでに前年比16%高に上昇しているという。

 日本には配合飼料価格安定制度というものがある。これは、配合飼料価格の上昇が畜産経営に及ぼす影響を緩和するため、補填を行う制度だ。しかし、上昇幅が大きすぎて、カバーしきれていないと指摘する声も少なくない。

 食べ放題業態において、こうした原材料費の高騰はまさに命取り。ただでさえコスパにシビアな層を対象にしているだけに、簡単に値上げするのは難しい。かといって値上げをせずに営業を継続すれば、やはり利益を圧迫する。

 食べ放題はコロナ禍において大きな武器となった。だが、これから先はいつ爆発するか分からない時限爆弾のようなもの。焼肉きんぐは今後、この困難にどう立ち向かうのか。その舵取りに注目していきたい。

最終更新日:6/22(水)14:17 現代ビジネス

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6430252

その他の新着トピック