連載『#父親のモヤモヤ』
男性の育休が注目されています。記者の私(39)も昨年、息子(1)の育児のため、5カ月の育休をとりました。ただ、それで育児が終わるわけではありません。今春から妻が働き始めることになり、私は育児をメインで担うため短時間勤務をとりました。育休中もいろんな悩みがありましたが、時短勤務にはまた別のしんどさを感じています。記者の体験を通じて、仕事と育児の両立のための男女の役割分担について考えます。(朝日新聞記者・玉置太郎)
春、まず驚いたのは「慣らし保育」の存在です。恥ずかしながら、知りませんでした。
息子の保育園では、最初の7日間は半日ほどしか預かってもらえません。妻も新任校で働き始めるタイミングなので、私が半日休をとりました。時短生活の出ばなをくじかれた気分でした。
しかし、実際に保育園に通わせ始め、思い直しました。毎朝離れる時、息子が号泣するのです。「ああ、この子も新生活なんや」。慣らし保育の大切さを実感しました。
時短が始まると夕方以降に取材を入れられなくなり、出張も簡単には行けません。自然と仕事の選択肢が狭まりました。同僚たちがこなしている夜勤にも入れなくなり、申し訳なさが募ります。
さらに、息子が2週間に1度は熱を出し、入院もしました。保育園で新型コロナ感染が多発し、1週間、臨時休園になったこともありました。
そのたびに保育園へ行けず、近くに親族もいないため、妻と交代で仕事を休みます。短い勤務時間で何とか処理しようとしていた業務が、イレギュラーなかたちで滞っていきます。
こんな仕事量で、自分の評価はどうなるのか。同期や後輩の活躍がまぶしく、不安が募ります。
時短のしんどさばかりを連ねてきましたが、もちろん、子どもと毎日ふれあえる時間は、何物にも代えがたい喜びです。
保育園に預ける際に、泣かなくなったこと。
帰り道の公園で、すべり台を上手にすべれるようになったこと。
保育士さんから「給食の野菜残さなかったんですよ!」と喜んでもらえたこと。
行きつけの商店街の店主に「バイバイ」ができたこと。
仕事の時間を家庭の時間に割り振ったからこそ、子どもの小さな成長を見つけることができています。それは母親にも父親にも、ともに必要な時間でしょう。日々の暮らしを大切にする視点は、きっと仕事にも生きてくるはずだと、信じたいところです。
記事の感想や体験談を募ります。いずれも連絡先を明記のうえ、メール(dkh@asahi.com)で、朝日新聞「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。
【#父親のモヤモヤ】仕事と家庭とのバランスに葛藤を抱え、子育ての主体と見られず疎外感を覚える――。共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、このようにモヤモヤすることがあります。
一方、「ワンオペ育児」に「上から目線の夫」と、家事や育児の大部分を担い、パートナーとのやりとりに不快感を覚えるのは、多くの場合「母親」です。父親のモヤモヤにぴんとこず、いら立つ人もいるでしょう。「父親がモヤモヤ?」と。
父親のモヤモヤは、多くの母親がこれまで直面した困難の追体験かもしれません。あるいは、父親に特有の事情があるかもしれません。いずれにしても、モヤモヤの裏には、往々にして、性別役割や働き方などの問題がひそんでいます。
それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながるはずです。語ることに躊躇しながら、でも、#父親のモヤモヤについて考えていきたいと思います。
最終更新日:6/21(火)16:00 withnews