パートやアルバイト、派遣など「非正規雇用」で働く人の割合はこの30年で倍増し、5人に2人に上る。都合のいい時間に働ける一方、雇用は不安定で収入も少ない。岸田文雄首相は就任2カ月後の所信表明演説で非正規雇用について触れ、「学び直しや職業訓練を支援し、再就職や、正社員化、ステップアップを強力に進めます」と語った。その約束は果たせるのか。当事者の声は届いているのだろうか。
「秘書として同じ仕事をしているのになぜ?」。疑問が膨らんだ。疲れていても、胸がどきどきして夜中に目が覚める。「明日はあれをしなくては」と考えると眠れない。心療内科で処方された薬を飲みながら「代わりの人がいない」と自らを奮い立たせた。半年ほど出社を続けた末、適応障害と診断され、15年3月に休職。正職員なら受けられる休業補償も適用されず、「私は使い捨てなのか」と悔し涙を流した。
そんな中、日本郵便の契約社員らが手当や休暇が正社員だけに認められるのは「不合理な格差」だとして起こした訴訟のニュースを見た。「苦しんでいるのは私だけじゃない。人件費をあらゆる方法で下げようとする社会の問題だ」と確信し、15年8月、大阪地裁に提訴した。
最終更新日:6/20(月)20:18 毎日新聞