18時に会議 仕事も育児もは建前か

連載『#父親のモヤモヤ』
希望しなかった残業の多い部署への異動、午後6時からの打ち合わせ、定時後に上司から資料作成の指示――。北関東の地方自治体に勤める30代の男性が育休復帰後に直面したのは、「子育てと仕事の両立を奨励という職場のメッセージは『建前』なんじゃないか」と考えざるを得ない職場の環境でした。「転職も考えた」という男性に話を聞きました。(朝日新聞記者・滝沢卓)

仕事と育児を両立できる環境を整えた企業に「奨励金」を出す自治体は多く、男性の勤務先も同じです。多くの部署で「ワーク・ライフ・バランスを意識しましょう」といったスローガンもよく見聞きします。

「それなのに内部がこんな状況ですか?」と思います。

午後6時から打ち合わせがセットされたり、定時後に上司が資料の作成を指示してきたりすることは、一度や二度ではありませんでした。「全てとは言いませんが、その時間である必要性を感じないものもありました」

希望した働き方とは真逆の多忙な部署への異動は、「希望は書かせても見てない様子。家庭環境は一切配慮せず、管理職のバランスだけ見て、それより下の年次の職員は近しい年代をただ入れ替えているだけ」と思わざるをえませんでした。

厚生労働省によると、男性の育児休業取得率(民間企業)は2020年度に12.65%になり、初めて1割を超えました。

ただ、育休が終わっても、子育ては長く続くもの。仕事と育児の両立は、復帰後のほうがよりシビアとも言えます。そうした大変さは父親も抱えるものですが、企業の経営者や人事担当者に理解が進んでいるとは限らない面もあります。

「子育てと仕事を両立する社員に対して抱く経営者側のイメージとして、『働くママってすごい』という話は耳にするけど、『働くパパってすごい』とはまだ聞かないんです。経営側にとって、働く父親と育児がまだまだひもづけられていないということです」

そう話すのは、子育てしながら働く人向けの転職サービス「withwork」を運営するXTalent(クロスタレント)代表取締役・上原達也さんです。

今年1月、育休をめぐる社員と企業側の意識調査を実施。対象は、育休取得経験のある男女2千人と、企業の経営者や人事担当の約2千人です。中には当事者と企業側の「ギャップ」をみる質問も用意しました。

例えば、育休復帰後の男性社員がワーク・ライフ・バランスを重視しているかどうか。

当事者の男性社員は55.5%が「重視している」とした一方、「男性社員が重視している」とイメージした企業側は36.8%と、双方の間で18.7ポイントの差が出ました。

同じ質問で、育休復帰後の女性社員は62.9%が「重視している」、企業側は49.5%。差は13.4ポイントでした。

上原さんは、「かねてから性別による家庭での役割が固定化されてきたことも背景に、社員が仕事と育児を両立することについて、企業側が女性には配慮しようと考えている一方、男性に対しては同じようには認識していない面がある」と指摘します。

ただ実際には、同社のサービスを利用する男性の話を聞いていると、子育て中の男性社員の中には、妻のキャリアアップも意識して、「自分の働き方を見直して家事育児の時間を増やしたい」と思う人もだんだん増えてきているといいます。

上原さんは、「企業側は男性に対しても、育休復帰前の面談を通して、本人が希望する働き方を聞く丁寧なコミュニケーションが重要です」と話します。

同じ調査では、当事者社員は男性も女性も約3人に1人は育休中に転職を検討していたという結果も出ました。

男性が育休中に転職を検討する理由(複数回答)は、「企業の将来性に疑問を感じたため」(31.4%)が最多。

ただ、「残業時間が長いため」(16.4%)、「リモートワークやフレックスなどの柔軟な働き方ができないため」(13.7%)、「育児をしながら働くことへの理解が薄いため」(10.9%)と、育児と仕事の両立の壁になりそうな回答も、それぞれ約10人に1人が選んでいました。

同社コンサルタントの筒井八恵さんは「男女にかかわらず社員本人がワーク・ライフ・バランスを重視するとしても、必ずしも100%残業ができないというわけではありません。フレックスタイムや在宅リモートワークの普及により、働く時間や場所の柔軟性があがり、残業に対する捉え方も変わってきている」と話します。

「時間と場所を柔軟に選べる働き方を企業側が整えることで、育児と両立したい社員の働きやすさにもつながるはずです」といいます。

※この記事は、朝日新聞「withnews」とYahoo!ニュースとの共同連携企画です。

最終更新日:6/20(月)18:23 withnews

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6430096

その他の新着トピック