GoTo急転停止 戸惑う宿と客

年末年始の書き入れ時を前に突然発表された観光支援策「Go To トラベル」の全国一時停止。九州の旅行、運輸業界からは「キャンセルが続出する」「倒産が増える」と悲痛な声が上がった。先行きが見通せない新型コロナウイルス禍。菅義偉首相の方針転換には理解を示す声もある一方、後手に回った判断に不満も漏れた。



 正月三が日で毎年200万人超の参拝客が訪れる太宰府天満宮(福岡県太宰府市)の参道関係者からは、新年直前の急展開に戸惑いの声が相次いだ。

 太宰府観光協会の不老安正会長は「年末から帰省客も含めた県外客でにぎわうのが例年だが、今春のようにまた人の動きが止まるだろう」と不安げ。天満宮近くで和雑貨店を営む斉藤風子さんは「もっと早く決断して、正月に合わせて解除してほしかった。政府の対応は遅かったと思う」と不満を漏らした。

 「大変なインパクトだ。廃業する人が出てもおかしくない」。福岡県旅館ホテル生活衛生同業組合の井上善博理事長は落胆する。年末年始用に食材の納入業者などと契約を進めている宿泊施設もあり、関連業者への余波も大きいという。

 大手旅行会社の福岡市の営業拠点関係者は、年末年始の海外旅行者がGoToで国内旅行に切り替えているため影響を心配。政府方針の急転換は混乱を招きかねず「もっと早くても良かったのでは」と指摘した。

 羽田-北九州線を主力とする航空会社のスターフライヤー(北九州市)は「年末年始を見込んで増便の対応をしていたが、状況次第で運休も検討せねばならないだろう」と当惑する。

 正月休みに観光や帰省を計画していた人たちからは、賛否の声が。1月10、11日に友人と熊本旅行を予定している福岡県内の大学生(21)は「久しぶりの遠出で楽しみだったのにどうしよう。キャンセルするか、このまま行くか、急すぎてまだ分からない」と困惑気味。

 同県久留米市の男性会社員(60)は「GoToを活用するためにPCR検査で陰性の人だけが使えるようにするなど、やり方があるのでは。国は考えるべきだ」と注文を付けた。

 一方、理解を示す声も。年末年始は自宅で過ごす予定の福岡市の松尾求実子さん(72)は「一斉にストップしないと意味がないので、良いことだと思う。九州でも最近、感染者数が増えてきて心配だった」。関東への帰省を取りやめたという同市の会社員市川航太さん(25)は「旅行者がたくさん来て感染が広がるのも困る。今は旅行という時期じゃない」と受け止めていた。 (川口史帆、小川勝也、上野洋光、向井大豪)

最終更新日:12/15(火)18:28 西日本新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6379415

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