欧州中央銀行(ECB)は9日、定例理事会を開き、国債などの資産を買い入れ、市中に大量のお金を流す量的緩和政策を7月1日に終了することを決めた。7月の理事会で0・25%の利上げに踏み切る。ECBの利上げは2011年7月以来、11年ぶりとなる。ウクライナ危機によるエネルギーや食品価格の高騰でインフレ圧力が高まっており、金融政策の正常化を早めて物価高に対応する。
ユーロ圏の5月の消費者物価指数は前年比8・1%上昇している。欧州連合(EU)は6月4日、ロシアへの追加制裁措置として、露産原油の輸入禁止措置を発動させており、エネルギー価格のさらなる押し上げは避けられない情勢だ。
ECBは国債などの買い入れ規模を段階的に減らしてきたが、物価の上昇ペースはECBの想定を上回っており、金融引き締めに向けた環境整備を急ぐ。
ECBのラガルド総裁は5月下旬、量的緩和政策の早期縮小を進める方針を表明し「7月会合で利上げが可能になる」と指摘。「7~9月期の早い時期にマイナス金利から脱却できる状況になるだろう」と予告していた。
ECBが景気下支えのためマイナス金利を導入したのは14年6月。金融機関が余ったお金をECBに預ける際に適用される「中銀預金金利」は現在、マイナス0・5%となっている。7月から利上げに踏み切ることで早期にゼロ金利状態に戻していく方向だ。
世界的なインフレを受け、各国中銀は新型コロナ禍対応の金融緩和から、物価高対策に主眼を置いた金融引き締めにかじを切っている。英国の中銀にあたるイングランド銀行は21年12月、日米欧の主要中銀ではじめてコロナ禍後の利上げを実施。米連邦準備制度理事会(FRB)も今年3月に量的緩和政策を終了し、3年3カ月ぶりの利上げに踏み切り、以降も利上げペースを加速させている。
ECBもこれに続いた形だが、欧州は米国などに比べ需要回復に力強さを欠いており、金融政策の引き締めを急げば欧州経済の腰折れを招く恐れもある。【ブリュッセル宮川裕章】
最終更新日:6/9(木)23:03 毎日新聞