東海道・山陽新幹線の速達列車「のぞみ」は、東京~博多間1069.1kmを約5時間で結んでいます。新幹線の線路は博多駅から先も鹿児島中央駅までつながっていますが、東京駅からの列車はすべて博多駅止まりとなり、逆に九州新幹線と山陽新幹線を直通する「みずほ」「さくら」は新大阪駅までしか運転されません。
せっかく線路がつながっているのだから、東京発鹿児島中央行きの列車があっても良さそうなものですが、現状ではそういった列車が設定されるという話はありません。なぜでしょうか。
現在、東京~博多間は「のぞみ」で約5時間、博多~鹿児島中央間が「みずほ」で約1時間20分ですから、直通列車があれば6時間半以内で東京~鹿児島中央間を結べそうです。東京~熊本間ならば5時間半ほどでしょうか。
筆者(児山 計:鉄道ライター)は2012年9月に熊本~新大阪間を「みずほ」、新大阪~東京を「のぞみ」と乗り継いで移動したことがありますが、新大阪駅での乗り継ぎを入れても所要時間は5時間半。個人的には移動手段として「あり」だと感じました。
気になる疲れ具合ですが、「みずほ」に使われるN700系電車7000番台の普通車指定席は横4列であるばかりでなく、シートピッチを除けばグリーン車に匹敵する座席であり、新大阪駅までの3時間3分は実に快適に過ごせました。新大阪からの「のぞみ」N700系も座席に関していえば、体形に沿って座面がしっかり保持してくれる構造ゆえ思いのほか疲労度合いは小さく、東京駅に着いたときは「意外と早かったな」という感想。新大阪駅での乗り換えで、気持ちをリセットできたせいもあるかもしれません。
ただし、東海道・山陽新幹線のN700系とは異なり、7000・8000番台には車体傾斜装置が搭載されておらず、半径2500mのカーブでは速度を落とさなくてはなりません。そのため東京~新大阪間を「のぞみ」と同じ所要時間で運転するのは難しいでしょう。さらに東海道新幹線は現在、車体傾斜装置付きN700系の性能に合わせた、毎時片道最大17本というダイヤを設定しています。この中に速度や設備の異なる列車を運行すると、ダイヤがより複雑化してトータルでのサービスダウンを招く恐れがあります。
こういったダイヤの再作成や案内の変更、あるいはN700系のシステムに合わせた7000・8000番台の改修に見合うだけの利用があれば、JR各社も検討するかもしれませんが、現状では残念ながら難しいといわざるを得ません。
とはいえ、かつては22時間以上かかった東京~鹿児島間の鉄道利用。現在はその3分の1以下の時間で到達可能です。鹿児島中央駅を夕方の17時18分に発てば、その日のうちに東京まで帰れるというのも、「ブルートレイン世代」の筆者には感動的ともいえる早さです。何せ1984(昭和59)年当時の寝台特急「はやぶさ」は、西鹿児島駅を12時20分に発車して、東京着は翌日の午前10時30分だったのですから。
最終更新日:6/10(金)6:22 乗りものニュース