長引く新型コロナウイルス感染拡大の影響が、地方経済にも暗い影を投げかける中、政府による「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」などを財源に、各地でユニークな取り組みを始めている自治体が現れている。型にはまらない斬新な取り組みは、果たして地方経済の復活に結びつくのか。識者は「事後の検証が大切だ」としている。
■2次会費用を支援
新潟県糸魚川市では、大人数で宴会を開いたグループに商品券でキャッシュバックする「今すぐUtage(宴)キャンペーン2022夏」を1日からスタートした。
8人以上で1人当たり4千円以上の予算で宴会や昼食会などを開くと、1人当たり2千円分の商品券をキャッシュバック。さらに宴会後、4人以上で1人当たり2千円以上の2次会を開けば、1人当たり1千円分の商品券が上乗せされる。
2次会まで支援する取り組みはめずらしいとみられるが、担当者は「2次会向けの小規模な飲食店も支援したい」とねらいを説明。商品券は、市内の約650店で利用可能だ。
■胎児にも支給
新型コロナウイルスやウクライナ情勢などによる物価高騰対策で、5月に市民1人当たり2千円分の商品券を配布した「全市民応援クーポン事業」を行う山形県南陽市では、まだ生まれていない胎児も対象に含めた。先行して令和2年に同様の事業を行った同県長井市にならって始めたもので、約3万人の市民に加え、母子手帳を持つ妊婦の場合、胎児の分についても配布。
「市民目線で決めた。市内経済の活性化に役立てたい」と同市商工観光課の後藤真道係長。商品券は今月末まで使用できる。
■レシート画像で還元
スマートフォンからレシートの画像を送るだけでポイント還元する「レシ活チャレンジ」で好評を得たのは横浜市だ。昨年12月から今春まで約46万件の利用があり、約2億円がポイント還元された。
市内飲食店で神奈川県が発行する「感染防止対策取組書」を掲示する約1万5千店のうち、印字レシートを発行する店舗で実施。専用アプリで飲食時のレシート画像を投稿すると、利用金額の20%がポイント還元される。
利用件数は堅調に推移し、事業期間の5月8日より早い4月22日に上限に達して、予定を前倒しして終了。市では感染状況を踏まえながら、8月中旬から11月までレシ活の第2弾を計画している。
■給食費据え置きに活用
徳島市では、保護者が負担する1食あたり(小学生288円、中学生333円)の給食費を据え置くことにした。令和4年度6月補正予算案に「新型コロナ・物価高騰対策関連」として「学校給食支援事業補助」を盛り込み5月末の市議会で可決された。
同市は、物価を反映させると1食当たり最大15・21円の転嫁になると試算。1日約1万8千食分の来年3月までの転嫁分に相当する約4600万円を食材納入業者の補助に充て、値上げを回避する。
こうした自治体の取り組みについて、みずほリサーチ&テクノロジーズの岡田豊上席主任研究員は、「交付金の使い道に困っているような自治体に比べ、知恵を絞るのは良いことだ。ウィズコロナ、アフターコロナの社会について、住民にビジョンを示すようなものであってほしい。また、結果についてはきちんとした検証が必要だ」と話した。
最終更新日:6/4(土)20:37 産経新聞