値上げしない シャトレーゼの挑戦

連日お伝えしている値上げのニュースですが、6月は食品だけで1500以上の商品が値上げされます。価格上昇の風はこれまでにないレベルで、まさに「値上げの嵐」となっています。長くデフレが続いた日本では値上げをすると消費が冷え込むことが多かったのですが、ここにきてこの値上げの嵐に打ち勝つような光も見え始めています。

吹き荒れる値上げの嵐の中、まず訪れたのはその嵐に立ち向かう、菓子の製造販売を手掛ける企業「シャトレーゼ」です。シャトレーゼの店舗にやって来ると、看板には「値上げしないことへの挑戦」と書いてありました。

シャトレーゼの主力商品はケーキやパンなど。小麦粉や砂糖などの原材料の価格は高騰していますが、来年3月まで値上げをしない方針を打ち出していました。ライバル各社が値上げする中、なぜ価格維持なのでしょうか。

「お客様の立場を考えると給与が上がらない。『皆さんの立場に立って考えないと』というのがわれわれの考え方。自分たちが何の努力もしないでお客様に負担させるのは、私は非常にけしからんと思う」(シャトレーゼの齊藤寛会長)

そこでシャトレーゼが取ったのは徹底的なコスト削減です。例えばプリンなどを工場に運ぶための小さなコンテナ。以前は1つ8円する使い捨てのプラスチック製の仕切りで商品を支えていましたが、コンテナそのものの形を改善し仕切りは不要に。これで年間およそ1000万円のコストを削減できるといいます。

またアイスは包装紙の質感や印刷に使うインク量を減らし、年間50万円を削減の見込み。さらに会長室もクーラーをほとんど止めて節約・節電に努めます。一つひとつは少額でも、合わせて年間2億円を超える削減が見込めるといいます。

価格据え置きは続けられるのでしょうか?

「できるところまでやろうと思う。できるだけそういうもの(食品など)を抑えて、豊かな気分で高額なものがどんどん買えるような余裕を与えたい」(齊藤会長)

一方、不安定な世界情勢、原材料・物流費の高騰、円安などが重なり、多くの企業にとって商品の値上げは避けられない状況です。帝国データバンクが主要な食品会社を対象に行った調査では、6月に値上げされる食品は今年に入り最も多いおよそ1500品目。来月以降もこの傾向は続き、年内には合計1万品目を超える見通しです。

今週、「お~いお茶」など、主力商品を秋に20円程度引き上げることを発表した伊藤園。本庄大介社長は会見で「私もいち消費者として考えればつらいなというのは当然ある。間違いなく売り上げは少し落ちるが、販促などで下支えしていく」と難しい決断だったことをにじませました。

今後も続く値上げの嵐。しかし消費者には変化の兆しも出ています。

6月1日からさまざまなものが値上げしますが、百貨店の食品売り場では値上げしても売れているものがあります。その商品が「牛テールカレー ゴロット」。輸入コストの上昇などにより2月上旬に1620円から2160円となんと500円の値上げに踏み切りましたが、販売が落ち込むどころか、値上げ前に比べ2.6倍も販売数が伸びました。

コロナ禍で落ち込んだ消費の反動もあるとはいいますが、消費者心理自体に変化が起きているといいます。

「価格が変わったから買い控えするわけでなく、いいものはお金をかけてでも買いたい。そんな客の購買心理を感じている」(「東武百貨店」池袋本店食品部の西野昭さん)

ほかの値上げした商品も今のところ大きな影響はないといいます。

「日々、利用する魚、野菜、肉などは、価格が少しずつ上がっているが、売り上げは特段落ち込んでいない」(西野さん)

訪れた客も「値上げは仕方がないという言い方は語弊があるが、やむを得ない」「世界の状況を考えるとある程度こらえどころじゃないかと思っている」と話します。

あるアンケート調査で、店の商品が10%値上がりした場合の消費者の行動を調べました。実は日本人は去年まで欧米に比べて「別の店に行く」と回答する人の割合が20ポイント近く高くなっていました。しかし、今年4月の調査では日本でも「同じ店で同じ商品を買い続ける」と答えた人が多数派に変わりました。

日本人は値上げを受け入れるように変化してきたのでしょうか。アンケートをまとめた東京大学の渡辺努教授は「逃げ場がなくなり追い詰められ値上げを受け入れる人が増えている」と説明します。

欧米各国で物価が大きく上昇しているため、日本の物価上昇もやむを得ないと考えている人が増えてきているといいます。値上げが受け入れられると、企業は賃上げができる余力が生まれる可能性があります。

「従業員は自分の生活を支えるために賃金を上げてほしいと声を上げれば、賃金も上がるし、価格も上がる。普通の経済を取り戻すことができる。少し明るく物事を考えてもらえれば」(渡辺教授)

経済界からも期待の声が上がります。

経団連の十倉雅和会長は1日の会見で「2%程度の持続的なインフレが起きて、それをベースアップ(基本給の増額)でカバーして。これを回転させないといけない。実際に起こさないといけない」と話しています。

※ワールドビジネスサテライト

最終更新日:6/3(金)19:53 テレ東BIZ

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6428349

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