外資系企業など一部を除く、各企業は6月1日、2023年春に入社する新卒学生向けに、面接など各選考を始めた。ただ、これはあくまで表向きのスケジュールであり、既に選考を終え、学生に内々定を出している企業も多くあるだろう。
記者も過去、事前に“面談”(という名の事実上の選考)などで内々定を出し、日本経済団体連合会(経団連)が「面接解禁日」と指定した6月1日ごろに、本社で採用担当者ら幹部と軽く雑談し、握手するという形だけの“選考”(一部の就活生は「握手会」と皮肉を込めて呼んでいた)を経験したことがある。
23卒の就職活動が大詰めを迎える中、10年前の人気企業ランキングと比較し、ランクインした企業の顔ぶれにどんな変化があったのか、各企業の直近の業績動向も絡め、検証する。
翌21年3月期の連結決算でも状況が好転することはなく、売上高は3721億円(前期比71.1%減)、営業損失は976億円、純利益に関しては過去最大の1052億円の赤字を記録。業績改善のため、本社ビルなどの売却を余儀なくされた。
期待された東京五輪も、コロナが収束せず、結果的に無観客開催となった一方、保有資産売却や、ワクチン接種会場とコロナ療養者へのホテル手配などの受託事業が功を奏した。5月27日発表の22年3月期の連結決算で、売上高は5823億2300万円(前期比156.5%)と増加したほか、営業損失も48億8000万円と大幅に縮小。2年ぶりに284億6100万円の黒字回復を果たした。
黒字回復は果たしたものの、JTBは「入国制限などで外国人旅行の需要は2年連続でほぼ消失した」としており、コロナ前の状態に業績が回復するには、今後もしばらく時間がかかるとみられる。
13卒文系の4位以下の企業を見ても、コロナで過去最大の1595億円の赤字を計上し、本社ビルを売却した「電通」(4位)、JTB同様に観光需要の減少で過去最大の赤字を記録した「エイチ・アイ・エス」(6位)、在宅勤務の浸透で鉄道収入が減少し、国鉄からの民営化後初となる5779億円の最終赤字となった「JR東日本」(10位)など、振り返るとコロナ禍の影響を大きく受けた企業が複数ランクインしていた。
その他は「三菱東京UFJ銀行」(当時、5位)、「日本郵政グループ」(7位)、「資生堂」(8位)、「ロッテ」(9位)がランクインしていた。
就活生の中には、第一志望の企業から内定が出た学生、競争率が高い難関企業から内定をもらい、周囲から祝福される学生がいる一方で、周囲が内定報告に湧く中、なかなか内定が出ず焦る学生、希望通りの企業から内定が出なかった学生なども多数いるだろう。
希望通りの就職活動を進めることができた学生は、学生時代の努力が評価されたということだ。素直に賞賛したい。これに対し、苦しい就活を送っている学生もいるだろう。そんな学生に、ドラマ「半沢直樹」(TBS)から、印象的なセリフを引用したい。
「『勝ち組』『負け組』という言葉がある。私はこの言葉が大嫌いだ。大企業にいるからいい仕事ができるわけではない。どんな会社にいても、どんな仕事をしていても自分の仕事にプライドを持ち、日々奮闘し、達成感を得ている人を本当の『勝ち組』と言うのではないか」(シーズン2、4話「セントラル証券」編より)
終身雇用制度が当たり前だった以前の日本社会では、新卒の就活時の結果がその後の人生の大半を決めていた。しかし、今は転職が当たり前の時代になっている上、「第二新卒」という制度も普及しつつある。新卒一括採用を廃止し、通年採用を導入した企業も登場した。
新卒時に思うような結果を得られなかったとしても、与えられた環境でベストを尽くすことで、当時の志望企業に行けるチャンスはあるし、社会人経験を積むことで、就活生だった当時とは違った景色が見えることもあるだろう。
また、この10年間で企業を巡る環境が一変したことからも分かるように、22年6月時点で人気の大手企業が今後10年間も安泰という保障はどこにもない。逆に、偶然入社した無名企業が、数年後に“大化け”している可能性もあるのだ。
23卒の就活も終盤に差し掛かっている。面接には運や相性なども影響することから、就活は一種の「企業とのマッチング」に過ぎない。自分と縁がある企業を探すことで、思わぬ出会いにつながることがあるかもしれない。
一方、企業に対しては、就活生も潜在的な「お客さま」「ユーザー」であるという視点を持つ必要がある。将来の「取引先」になる可能性もあるだろう。
記者もかつて、回答を全て否定する「圧迫面接」をする企業や、選考後、半年近く経過してからメール1通で不採用通知(いわゆるお祈りメール)を送ってくる企業に遭遇した。メールがあるのはまだいい方で、結果に関する連絡すらない企業もあった。いずれも皆が知っているであろう、大手企業だった。
就活生に対して、採用側の立場を利用した高圧的な態度や、配慮を欠く対応を取ると、昨今はSNSなどで炎上するリスクがある。吉野家が、就労ビザを理由に、外国籍の学生を説明会から“排除”していた事例が記憶に新しい。この事案は、就活生のTwitterでの告発が発端だった。
就活生も企業の対応をよく見ており、採用選考時にネガティブな印象を持たれると、潜在的な顧客を失うことにもつながる。裏を返せば、学生にとって就活は、企業の“実態”を可視化する、いい機会とも言える。
採用人数に制限があり、人気企業になると全応募者の応募書類に目を通すことができないこともあるかもしれない。だが、応募者は書類作成に時間をかけ、企業が指定した面接日時に予定を合わせただけでなく、面接時にも志望動機などで、少なからず、その企業に思いを馳せている。
最終的に不採用という結論に至ったとしても、就活生に対し、企業として節度ある対応が求められる。
最終更新日:6/2(木)14:40 ITmedia ビジネスオンライン