「妻は厨房で倒れ、3時間放置されて死んだ」牛丼チェーン「すき家」パート女性が"早朝ワンオペ勤務中”に突然死していた!《再び起きた"ワンオペ”の悲劇》 から続く
2022年1月17日午前5時すぎ、愛知県名古屋市にある牛丼チェーン店「すき家」で、パート女性の山田加奈子さん(仮名・58)が、1人で店舗を切り盛りする”“ワンオペ”勤務中に倒れ、3時間放置された後、死亡していたことが「文春オンライン」の取材でわかった。加奈子さんの夫である直樹さん(仮名・46)が取材に応え、「妻の死」の詳細を明らかにした( #1を読む )。
取材班が「すき家」に問い合わせをすると、5月25日、事実関係を認めたうえで、「山田さんがお亡くなりになる直前の労働時間は法定の労働時間内であり、過剰な無理をされていた事実はない」などと回答があった。そして、その4日後、再び「すき家」から連絡があり、「本件を受け、すき家の経営方針として、本年6月30日までに全店の朝帯(5時~9時)で複数勤務とすることを決定しました」と“朝帯のワンオペ”を廃止するとの文章が届いたのだった。
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取材班は5月23日に株式会社すき家に、事実関係についての確認と、加奈子さんが「ワンオペ勤務中に亡くなったこと」についての見解を問う文章を送った。すると、その2日後の夕方に以下の内容の書面が届いた。
〈勤務中にお亡くなりになった山田さん(文章中は本名、以下同)、そしてご家族のみなさまには心よりお悔やみ申し上げます。
当社では過日公表しているとおり、2014年以降、深夜帯(0時~5時)の犯罪や事故を未然に防ぎ、従業員が十分な休憩時間を確保できるよう、深夜帯(0時~5時)の複数勤務体制を徹底し、現在に至っています。これにより地域の警察にもご協力いただいて強盗などの犯罪は未然に防ぐことができ、また従業員の職場環境も改善することができました。
深夜帯のあと、午前5時以降の朝帯で、現在、複数勤務体制で営業している店舗は、平日は約6割、休日は約8割となっています。残りの店舗で一人勤務体制の店舗もありますが、朝帯が一人勤務であったことに起因する重大な事件や問題は発生していません。
山田さんがお亡くなりになった17日当日は、前日16日の22時から翌午前5時にかけての深夜帯を二人体制で勤務、その後上記の基準に沿い、朝帯は午前9時までの予定で一人勤務しておられました。
ただ、これはあくまでもルール通りきちんと「ワイヤレス非常ボタン」を装着していた場合です。今回は残念なことに山田さんが「ワイヤレス非常ボタン」を装着しておらず、本部で異変を察知することができませんでした。
会社としても店舗への「ワイヤレス非常ボタン」装着の徹底が足りなかったと反省しています。二度とこうした事態が起こらないよう、今年1月下旬にも全国の店舗に「ワイヤレス非常ボタン」の装着をより厳格に徹底するよう通知を出しました。今後も定期的に呼びかけをしてまいります。
山田さんがお亡くなりになった原因は心筋梗塞であったと聞いています。心筋梗塞の場合、多くはいきなり大きな発作になることはなく、前兆となる胸の痛みや動悸などの症状が現れます。お亡くなりになる前年の8月には深夜(22時-5時)に勤務する従業員向け健康診断の対象であることから、ご本人へ通知はしていたものの、残念ながら山田さんは受診されていませんでした。こちらについてはご本人もさることながら組織としても受診を徹底すべきものであり、会社として重くとらえています。
引用が長くなったが、概要としては事実関係を認めたうえで、ワンオペは深夜帯で禁止しているもので、朝帯(5時~9時)には一部店舗でワンオペ勤務は行われている。しかし、不測の事態が起きた場合に備えて「ワイヤレス非常ボタン」を常時装着し、本部とすぐに連絡を取れるように指導していたが、山田さんはこの「非常ボタン」を装着していなかった。また、健康診断も受けておらず、持病の発見にも至っていなかった。山田さんが死亡する直前の労働時間は法定の労働時間内であり、過剰な無理をしていた事実はない、とのことだった。
確かに、「すき家」には管理体制上、明確な「落ち度」はなかっただろう。しかし、直樹さんが訴えるように「もしあの時、妻がワンオペでなければ助かったかもしれない」と考えるのも、また“人情”ではないか。
最終更新日:6/1(水)18:54 文春オンライン