新幹線に乗る楽しみといえば、あのスピード感に、駅弁、カチカチに冷えたアイスクリーム――とたくさんあるが、中でも「車窓から眺める富士山」は、必須ではないだろうか。JR東海は5月27日、東海道新幹線の最新車両「N700S」を2023~26年度にかけて、追加で19編成投入すると発表した。追加投入にあたり、車内スペースを一部改良。多目的室の窓の高さを変更し、車いす利用者がより景色を楽しめるようにする。これまでは富士山の山頂が欠けて見えなかったが、改良後は山頂部まで全体がきれいに見渡せるようになるという。改良の狙いを担当者に聞いた。
「車いすで新幹線を利用するお客さまがさらに快適に過ごせるよう、障害者団体などとバリアフリーに関する車内設備について議論を続けてきました」
こう話すのは、JR東海広報部の門山駿一郎さんだ。
N700Sは20年7月にデビューした同社の最新車両。“S”は“Supreme”(最上の意)の頭文字で、「N700シリーズ中、最高の新幹線車両」を意味する。車体の揺れを大幅に抑える「フルアクティブ制振制御装置」を採用し、主力のN700Aに比べ、より高い乗り心地を実現している。
車窓の位置の見直しで、富士山の眺めをより良くさせる今回の改良。SNSでは「令和版マウント富士計画」などと評する声が挙がっている。
マウント富士計画とは何か――。それは「富士山」を眺めながら食事を楽しんでもらうための計画だ。
1964年、東海道新幹線の東京~新大阪間が開業した。72年には山陽新幹線が新大阪~岡山間、75年には博多まで伸びる中、当時の国鉄は食事への需要が高まると想定。74年以降「食堂車」を導入していった。
当時、食堂車には山側に通路があり、通路と食事スペースの間に壁があったため、富士山を眺めることができなかったという。
「富士山を眺めながら食事をしたい」という乗客の要望を受け、国鉄は79年、山側に窓を設置する工事を実施した。これが通称「マウント富士計画」だ。
その後、新幹線の高速化などに伴う利用者減で、食堂車は2000年3月のダイヤ改正で姿を消した。
JR東海広報の門山さんは、SNSでマウント富士計画が言及されていることに対し、「今となっては計画についてもともと知らない社員も多い」と話す。
最終更新日:5/31(火)9:23 ITmedia ビジネスオンライン