ランドセル製造がトマト栽培 なぜ

ランドセル製造の老舗業者「鞄工房山本」(奈良県橿原市)が今春からトマト栽培に進出し、収穫のピークを迎えている。ICT(情報通信技術)を活用した「植物工場」のためほぼ年間を通した生産が可能で、収益の柱になればと期待する。畑違いともいえる分野に手を広げたのは、ランドセルメーカーを襲う危機感だった。



 同社は1949年の創業で、現在は年間約1万8000個のランドセルを販売。東京・銀座や横浜などにも直営店を構えている。

 だが、業界が頭を悩ませるのが少子化だ。厚生労働省によると、2021年の出生数(速報値)は約84万人で、1899年の統計開始以降最少。新型コロナウイルス感染拡大によって雇用環境が不安定になるなどの影響で、ここ数年はさらに減少率が加速している。

 ランドセル業界の先細りが避けられない見通しの中、山本一彦社長は「本業と並ぶ経営の柱が必要だった」と振り返る。当初は学習塾の経営なども検討したが、「ものづくり」という点で共通点がある野菜栽培に挑戦することに決めた。

 橿原市内に約1800平方メートルのビニールハウス「藤原京菜園」(同市田中町)を建設。ICTで湿度や温度、二酸化炭素濃度などを自動制御する「植物工場」のシステムを導入し、ノウハウ不足も補った。今春はトマト約1700株を栽培。二酸化炭素量を多くして光合成を促し、土壌に微生物を活性化させる特殊な酵素を加えて育てることで、濃厚な味に仕上がった。

 菜園責任者でランドセル職人から転身した中村英さん(39)は「販売先で『おいしい』と直接言ってもらえるのが、職人の時との大きな違い。以前から農業がしたかったのですごく楽しい」と話す。

 「藤原京トマト」と銘打ち、「まほろばキッチン橿原店」(同市常盤町)など市内外の農産物直売所で販売中。今後は栽培する株数を倍増させ、将来的にはイチゴなどにも進出する計画だという。藤原京トマトに関する問い合わせは同菜園(050・1748・5809)。【稲生陽】

最終更新日:5/29(日)13:21 毎日新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6427806

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