居酒屋悲鳴「GoTo効果ない」

新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた飲食店などを支援する「Go To Eat」キャンペーン。しかし、ネット予約によってポイントが付与されるオンライン予約事業は、10月1日のスタートからわずか1カ月半後の11月中旬に、616億円の予算を使い切ったとしてポイント付与が終了した。さらにその裏では、店側が客を装ってネット予約をし、架空の実績でポイントを不正に得ようとした事案があることも明らかになった。



 現在もプレミアム付き飲食券事業を中心に推し進められているものの、11月末以降のさらなる感染拡大によって8都道府県は営業時間の短縮を要請。各地域で飲食券販売の一時停止や、食事券とポイントの利用を控えるよう呼びかけられるなど、混迷を深めている。通常なら繁忙期のはずの年末年始に集客を望めなくなったことで、酒を提供する飲食店からは悲鳴があがっている。

 しかも筆者が農林水産省に問い合わせたところ、「Go To Eat」キャンペーンに参加登録している飲食店は、国の集計でも全体の約3分の1程度だという。果たしてこれで飲食業全体を救う事業と言えるのだろうか。改めて「Go To Eat」を検証する。

政府は「Go To Eat」には一定の効果があるとして、ポイントや食事券を利用できる期間の延長を検討。さらに、食事券事業の追加措置についても調整を進めている。一方で前出の「やきとり一休」のように、酒を提供する店では感染拡大や営業時間の短縮要請によって客足は遠のいている。本当に飲食店全体に効果があるといえるのだろうか。

 筆者は農林水産省に、「Go To Eat」に参加登録している飲食店の数をどのように把握しているのかを聞いた。農水省では、国内の飲食店数を、総務省の「経済センサス‐基礎調査」から、59万店舗と見ている。11月24日時点での登録店舗数について回答があった。

 ポイントが付与されるオンライン飲食予約事業に参加している店舗は、延べで15万9839店舗。この数字は、「Go To Eat」に参加している予約サイト13社に登録されている参加店舗数を集計したものなので、かなり重なっている部分がある。

 飲食業界の関係者によると、オンライン飲食予約事業は予約サイトへの登録や、送客手数料を支払わなければならないことから、参加のハードルが高い。国が集計している延べ数字に対して、実際に登録しているのは5万店舗程度ではないかと見ている。だとすれば、全飲食店の約10分の1だ。

 プレミアム付き食事券事業については、各都道府県に事務局が置かれている。各事務局に登録されている店舗数を合わせて、21万8685店舗と集計している。あくまで登録数なので、実際にその店舗に食事券を利用する客が訪れているのかどうかは不明だ。

ただ、農水省が集計した約20万店舗という「Go To Eat」参加店舗数は、業態の内訳が明らかにされていない。ファストフードなど活況を呈している飲食店もあるものの、新型コロナの影響を最も受けて、現在も前年並の売り上げに回復していないのが、居酒屋などの酒を提供する飲食店だ。

 日本フードサービス協会が発表した外食産業市場動向調査によると、パブレストラン・居酒屋業態の10月の売上は前年比63.7%。60%を超えたのは今年3月以降では初めてだが、それでも飲食店の中で最も回復が遅れている。

 その傾向は、倒産件数にも現れつつある。東京商工リサーチの「飲食業の倒産動向」調査によると、新型コロナの感染拡大で打撃を受けた、負債1000万円以上の飲食業の倒産は、2020年1月から11月までの累計で前年比8.0%増の792件。これまでの年間最多だった2011年の800件を上回るのが確実になった。そのうち、「酒場、ビヤホール(居酒屋)」は162件。前年同期比で25.5%も増加しているのだ。

 営業時間短縮の影響を最も受けるのも、酒を提供する飲食店だろう。大手のチェーンでは居酒屋の店舗数の削減や業態の転換を進めている。しかし、規模の小さな店舗は資金力が乏しいケースが多いため業態を転換する余裕はない。倒産件数以上に、閉店や廃業を余儀なくされた店舗は多いと見られ、年末に向けてさらに倒産や廃業が増えるのではないかと懸念されている。

最終更新日:12/13(日)17:32 ITmedia ビジネスオンライン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6379188

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