―[あの企業の意外なミライ]―
くら寿司の好調を支える要因のひとつにコラボがあります。大ヒット作となった『鬼滅の刃』とのコラボは計7回も実施。家族連れなど、オリジナルグッズを目的に多くの人が来店しました。
また直近では『名探偵コナン』とのコラボも話題となりました。ほかにも、くら寿司は人気アニメとのコラボに意欲的で、この点が集客の強みのひとつとなっています。
もちろんコラボだけでなく、肝心の寿司においてもこだわりが光ります。
特に好評なのが「かにフェア」です。
昨年から高騰が続いている「かに」ですが、くら寿司では「本ズワイガニ 二種盛り軍艦」「特盛 かににぎり」などが220円、この他にもカニをふんだんに使用したメニューを安価な料金で提供。「かにフェア」は昨年11月から3月までで3回展開されました。
もう一点、今後のさらなる飛躍まで見据えて注目すべき動きがあります。
3月31日に世界最大の店舗面積となるくら寿司スカイツリー押上駅前店がオープンしました。
スカイツリー押上駅前店は、他の店舗よりも内装などで和のテイストが強いグローバル旗艦店という位置づけもあります。今後のインバウンド需要の復活までを視野に入れた出店です。また、グローバル旗艦店は、スカイツリー押上駅前店の他にも原宿、道頓堀、浅草ですでに出店しています。
今後の海外からの旅行客の回復までを見込んだくら寿司の中長期的な戦略のひとつです。これらのコラボ、グローバル戦略はスシローよりも先進的かつ勢いがあるというのが筆者の考えです。
企業にとって、“足元の強さ”とは何でしょうか。
スシローの足元の強さの具体例として、販管費率という指標を紹介します。こちらは売上高に対してどれだけ費用がかかったかを示す数値です。人件費、運搬費、広告宣伝費などがこれに当てはまります。
販管費率はくら寿司が約52%なのに対し、スシローは約47%です。この数値は低ければ低いほど、経済効率が良くなります。つまり、スシローはくら寿司よりも「コスパが良い」のです。
また1店舗ごとの売上を見ても、くら寿司の約2.6億円に対し、スシローは約3.3億円。こちらもスシローに軍配が上がります。
スシローの売上高が大きい理由には、寿司自体の質を支える仕入れや店内調理、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を活用することによる顧客満足度の向上など複数あります。また、コロナ渦で導入した非接触で持ち帰りできる「自動土産ロッカー」などの取り組みもあります。
販管費率と1店舗ごとの売上を紹介しましたが、スシローは経営基盤が非常に堅実かつ強固なのです。くら寿司は好調とはいえ、簡単に乗り越えることはできないでしょう。
特に、くら寿司では従業員の内部告発報道や、スタッフのSNSでの投稿による炎上など、内部での問題も発生しています。決して、企業として業績がよいからそのまま勢いづくとは限らないのです。
両者の戦略の違いから、今後の戦略と展望がおわかりいただけたのではないでしょうか。
<文/馬渕磨理子>
―[あの企業の意外なミライ]―
【馬渕磨理子】
経済アナリスト/認定テクニカルアナリスト、(株)フィスコ企業リサーチレポーター。日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでマーケティングを行う。Twitter@marikomabuchi
最終更新日:5/23(月)8:55 週刊SPA!