CA採用中止 女子学生は泣いた

新型コロナウイルスの感染拡大は、客室乗務員を目指す学生の進路に大きな影響を与えている。学生たちの思いを追った。



      ◇

 「採用活動を中止します」。7月、航空会社から届いたメールを読み、昭和学院短大(千葉県市川市)に通う2年生の女子学生は泣いた。夢見た客室乗務員(CA)への道が閉ざされた。大きなショックを受け、頭の中が真っ白になり、何度も泣いた。「もう1年早く入学していれば良かった。あんなに努力したのに試験を受けるチャンスすらなかった」と無念の思いは消えない。

 新型コロナウイルスの影響で航空旅客が激減し、業績の落ち込む全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)は「事業計画の策定が困難」などとして、2021年春入社の新卒採用を大幅に減らし、CAの採用をゼロにした。

 この女子学生はCAに絞って就職活動をしてきた。CAになりたいと思ったのは中学生の時で、初めて1人で航空機に乗って旅をした。怖くて機内で緊張していると、CAに「少しでも不安になったら呼んで」と声を掛けられ、特別にデザートを出してくれた。やさしさに感動し、憧れの職業になった。進学先にエアライン・観光コースのある同短大を選んだ。今年3月、短大のカリキュラムで成田空港に行き、CAや地上旅客係員の仕事を見学し、搭乗口で出発機に手を振って旅客を見送った。「採用試験に必ず合格し、あの制服を着たい。世界中の人に日本の魅力を伝え、笑顔で旅客に接するCAになりたい」と思いを強くした。

 第1志望の全日空から7月、CAの採用中止を知らせるメールが届いた。気持ちを切り替えることができず、授業を受けても内容が頭に入らなかった。短大の就職指導を受け、「一生懸命働いて自立し、一人でいろいろなことをできるようになりたい」と思うようになった。ほかの学生から数カ月遅れ、9月に医療系の会社から内定が出た。夢をあきらめていない。「世の中が落ち着けば絶対にCAを目指す。社会人としての経験を生かし、もう一度チャレンジする」と心に決めている。

 就職指導にあたった同短大の小川弓美子助教(キャリアデザイン)は「本人のつらさが伝わり、世の中は不確定だと思い知らされた。CAになる夢を持ち続けるのはすてきなこと。働いて見えてくることはたくさんあり、コミュニケーション能力を磨き、目標に向かって自分を高めてほしい」とエールを送る。

 × × × ×

 全日空を傘下に持つANAグループは21年度に募集予定だった3200人のうち、採用数を自社養成パイロット訓練生や障害者、既に整備士や空港係員の職種で内定を出していた専門学校生の計700人に減らした。20年度に659人を採用したCAはゼロになり、「大変心苦しく、謹んでおわびします」とコメントを出した。

 JALグループの21年度の採用は、予定していた約1700人からパイロットや障害者ら約150人に抑制した。CAや事務職などの採用活動を5月27日に中断し、7月28日に中止した。日航は「皆さまの期待に応えることができず、深くおわびします」としている。【中村宰和】

最終更新日:12/8(火)18:36 毎日新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6378764

その他の新着トピック