ネイルサロンの倒産が相次いでいる。帝国データバンクの調べでは、ネイルケアや関連サービスを提供する「ネイル専門サロン」の倒産が11月までに19件判明。この時点で2000年以降最も多かった14年(18件)を上回り、過去最多を既に更新している。このペースが続けば、ネイルサロンの倒産は過去初めてとなる20件台の突破もみえており、増加傾向が続いている。
ネイルサロンの倒産で近年目立つのは、マンションサロンやホームサロンなど、小規模なネイルサロンの倒産が相次いで発生している点だ。市場の拡大に伴い、大手から中小の美容関連企業、独立したネイリストが相次いで市場に参入してきた。
しかしその半面、店舗数が急増したことで競争激化の影響が深刻化、収益確保がままならず厳しい経営を余儀なくされてきた。そこに新型コロナウイルスの影響で外出機会が大幅に減少し、メイクなど女性の美容需要減退が重なった。そのため、先行きを見通せずに事業継続を断念せざるを得ないケースも発生するなど、ネイルサロン業態は今厳しい状況下に置かれている。
こうしたなか、今年に入り新型コロナウイルスの感染が拡大。不要不急の外出自粛や在宅勤務の普及、所得の減少などで美容需要そのものが縮小しており、厳しいネイルサロンの経営に追い打ちをかけている。首都圏でネイルサロン「prish(プリッシュ)」の運営を手掛けるネイルデザインが5月に実施した調査 では、緊急事態宣言の期間中、美容にかける1カ月の支出金額を「0円」と答えた人が約4割に達した。一方、解除後の予定でも「0円」が25.5%と、4人に1人が美容への支出削減を予定しており、平常時に比べて美容の支出を極力抑制する傾向が強まっている。
現状をみると、ネイル需要減のピークは一旦過ぎたようだ。ネイルサロン「ファストネイル」などを運営するコンヴァノ は、2020年4-9月期の連結売上高が6億1500万円と、前期に比べて半減した。緊急事態宣言の発出中に店舗運営を取りやめた影響が残ったが、6月以降は店舗に飛沫防止シールドを設置するなど感染防止策を徹底している。また、コロナ禍で客足が遠のいたリピーター向けのキャンペーン展開や、新規顧客の獲得にも注力。その結果、同社の9月の新規顧客数は前年同月に比べても1.4倍に拡大するなど、減少したネイル顧客が再び戻り始めている兆しもある。
ただ、在宅勤務の普及などで働く女性を対象にしたオフィス(職場)ネイル需要などは、コロナ禍以前の水準に短期間で回復するかは不透明だ。主要な顧客層の一つである、いわゆる「夜の街」に勤める女性の需要も、大幅な需要回復が見込める状況には当面ない。3万店規模に拡大したネイルサロンは、急激に縮小するパイを取り合う熾烈な生き残り競争に直面することを余儀なくされる見通しで、来年以降も淘汰が進む可能性がある。
最終更新日:12/8(火)14:00 帝国データバンク