ハンドドライヤー再開NG なぜ

経団連が1日に改定した新型コロナウイルスの感染予防対策に関する企業向けガイドラインで、注目を集めていたのがトイレで手を乾かす「ハンドドライヤー」の取り扱いだ。経団連は5月に策定した同ガイドラインで使用中止としたが、オフィスや商業施設などからの要望を受けて再開を検討。諸外国の対策でもハンドドライヤーの使用中止を行っている例は見つからず、今回の改訂に使用再開を盛り込む方向だった。ただ、事前にこうした報道が出たことで批判的な意見が殺到。その他の理由も重なり、再開を断念せざるを得なくなったという。



 経団連では、感染拡大が予想される冬場をとらえ、ガイドラインの改定を検討。背景には、5月のガイドラインの内容はコロナの実態や対策がまだ分かっていない時期に策定されたこともあり、エビデンス(科学的根拠)に基づいて、厳しくしたり緩和したりする必要があるとの判断があった。

 その中で、検討項目の一つに挙がったのがハンドドライヤーの扱いだ。5月のガイドラインで使用中止としたものの、「世界保健機関(WHO)や各国の対策をみても、ハンドドライヤーを使用中止にしている例はない」(関係者)ことなどから再開を認める方向で調整が進んだ。手をしっかり洗っていれば飛沫(ひまつ)にウイルスが残っていることはないので問題はないし、逆にきちんと乾かさない湿った手だと、そこにウイルスが付着するという専門家の意見もあるという。

 ハンドドライヤーを設置する企業や商業施設からの、「いつまで中止にするのか」といった問い合わせも増えてきていた。

 しかし、ふたを開けてみると、使用再開は見送りに。関係者は、その理由として次の3つを挙げる。

 第1に、反対意見が上がったこと。11月上旬に一部通信社がハンドドライヤーの再開方針をスクープし、テレビのワイドショーなどでも取り上げられたことで、「コロナの感染が終わってないのに再開はおかしい」といった一般消費者からの意見がメールなどで経団連に多数寄せられる事態になった。

 第2に、いわゆる第3波といわれる感染の急拡大が11月の中旬以降に始まったことで、行動制約の緩和方向ともなるドライヤー再開を盛り込むべきか、経団連としても対応に苦慮したことが挙げられる。

 最後は関係省庁の対応だ。経団連の責任者によると、「『もともと政府の専門家会議がハンドドライヤー中止を打ち出したことがきっかけだ』として、専門家会議が再開を決めなければ了承できないというのが各省庁のスタンス」。エビデンスを示し、交渉を続けたが、説得しきれず、タイムリミットを迎えたという。

 その結果、今回のガイドラインでも、「ハンドドライヤーは利用をやめ、共通のタオルを禁止し、ペーパータオルを設置するか従業員に個人用タオルを持参してもらう」という5月に示した内容を踏襲するしかなかった。

 ただ、改定ガイドラインのプレス資料には「ハンドドライヤーの取り扱いについては別途改定に向け、関係者と協議中」との一文が盛り込まれた。経団連の古賀信行審議員会議長も「エビデンスに基づいて、不合理なものは改定していかないと社会が回らない」と、実態や科学的な対応を基にガイドラインの見直しを続ける考えを示した。

最終更新日:12/2(水)22:15 産経新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6378193

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