コメダ復活 ドトールと明暗

コロナ禍の影響を大きく受けた喫茶業態だが、業績の回復という点で差が開いてきた。

 2020年10月、「珈琲所コメダ珈琲店」を展開するコメダホールディングスの既存店売上高(FC向け卸売売上)は前年同月比101.6%と好調だった。緊急事態宣言が発令されたために最も落ち込んだ4月は53.1%だったので、V字回復している。



 一方、ドトールコーヒーの10月の既存店売上高は79.6%で、4月の35.9%からはかなり回復してきているものの、前年並みに戻るにはかなり時間がかかりそうだ。

 コメダが好調なのは、季節限定バーガー「コメ牛(こめぎゅう)」というヒット商品が出た効果もある。また、密になりにくい郊外型のロードサイドを中心とする立地も有利に働いている。

 ドトールも「全粒粉サンド 大豆ミート ~和風トマトのソース~」という先進的かつ意欲的な新商品を出していて、効果も出ているものの、都心型または駅前立地が不利を招いた。

 このままリモートワークが定着し、東京、大阪、名古屋などの都心部で働く人が減る傾向が続くとどうなるか。コメダのような郊外型喫茶がさらに台頭する一方、ドトールのような都心型喫茶の凋落(ちょうらく)は不可避な情勢である。

コメダは商品的にも冴えている。9月1日に発売した季節限定のハンバーガー「コメ牛」が大きな反響を呼んだ。売れすぎて、一時は欠品が相次ぐほどで、業績回復に寄与した。

 サイズは、並が680円(税込、以下同)、肉だくが980円、肉だくだくが1280円と3段階になっている。並でも、バンズのサイズが通常のハンバーガーの1.5倍はあろうかと思える大きさで、しかも挟まっている110グラムの肉やせん切りにしたキャベツがはみ出していて、迫力があった。肉だくは220グラム、肉だくだくは330グラムの肉をそれぞれ挟んでおり、食べた人がSNSに投稿することでさらに人気が高まる好循環を生んだ。

 同商品は、牛カルビ肉を甘辛のたれで炒めている。そして、コメダが自社工場で製造しており、「高級ホテル仕様」といわれるパンともよく合っていた。

 この商品のヒットで、コメダのボリューム感ある、こだわりのパンを使った「みそかつパン」をはじめ、サンドイッチやハンバーガーといったメニューが、改めて見直された。

 また、名物スイーツ「シロノワール」の季節限定品で、熊本県産の和栗を使用した「シロノワール くまもとモンブラン」を発売しており、こちらも好調だ。通常サイズとミニサイズがあるが、ミニサイズであっても小食の人なら1食分の食事と同等の分量がある。

 このように、コメダのファンでなくても、思わず行ってみたいと思わせるようなヒット商品を生み出している。苦境を脱することができるのも、こういった同社の底力のおかげである。

さて、都心型を主力とするドトールの、1月~10月における既存店売上高(前年同月比)の推移を見てみよう。1月:99.4%、2月:96.2%、3月:77.9%、4月:35.9%、5月:36.5%、6月:67.0%、7月:68.8%、8月:69.3%、9月:71.8%、10月:79.6%となっている。

 ドトールの場合は、今年に入ってから一度も既存店売上高が前年同月を上回ったことがない。1、2月は少し良くない程度で、気にするほどではない。やはり、新型コロナの感染が拡大してきた3月から影響が出始め、4月が底となり、その後は回復基調である。

 しかし、6月に急回復した後は、足踏み気味だ。在宅ワークの定着により、都心部に通勤する人が減っている影響がもろに出ている。ドトールほど低価格で品質の高い商品を提供する洗練された企業でも、人の流れが変わればここまで苦戦するのかと、驚きを禁じ得ない。

 恐らくは、今のままの立地によるビジネスモデルでは、元の売り上げまで戻すのは、不可能とまでは言わないが、容易ではないだろう。

 同社には、「ドトールコーヒーショップ」と、グレードアップした「エクセルシオール カフェ」という主要2業態が存在する。10月の既存店売上高は、ドトールが80.3%に対して、エクセシオールは74.1%となっており、エクセシオールのほうが戻りが良くない。これは、エクセシオールの立地のほうがより都心型であることに起因していると思われる。

 店舗数は、ドトール1087店、エクセルシオール123店、その他91店で、計1301店(20年10月時点)。

都心部に店舗が多い印象があるサンマルクホールディングスの、1月~10月における既存店売上高(前年同月比)の推移はどうだろうか。1月:100.0%、2月:99.4%、3月:66.0%、4月:14.3%、5月:17.5%、6月:62.0%、7月:69.8%、8月:67.9%、9月:76.7%、10月:88.0%となっている。

 サンマルクも、1、2月は平常で、3月から影響が出始めた。そして、4月はなんと9割に迫る売上減となり、その後はV字回復の途中といった感じだ。緊急事態の頃は、最大で全店の95%を閉めていたので多大な影響が出た。

 しかし、既に9割近くまで戻しているので、前年並みにまで回復するのも、不可能ではなさそうだ。

 同社の展開する業態は、都心部や駅前に強い主力の「サンマルクカフェ」が388店。郊外型が多い「ベーカリーレストラン サンマルク」が59店などとなっており、他にも「バケット」のようなショッピングセンターを中心にチェーン化された業態もある。

 都心部立地の比重が高いものの、郊外に強いブランドも持っている。そのため、コメダほど好調ではないが、ドトールほど回復が遅れているわけでもない。つまり、中間的な状態になっている。

 サンマルクカフェでも、売り上げ回復のため、新商品投入に注力している。例えば、名物パンの「チョコクロ」より高価な「プレミアムチョコクロ」シリーズを販売し始めた。11月初旬には「プレミアムバナナアーモンドチョコクロ」を発売。さらに、クリスマスに向けてメロンパンタイプの「プレミアムメロンパンホワイトチョコクロ」を投入し、好評を博している。

最終更新日:12/2(水)6:50 ITmedia ビジネスオンライン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6378152

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