中古水没車 告知なくトラブル

故障リスクが高い「水没」の事故歴がある中古車「水没車」が、告知されないまま中古市場に出回るケースが後を絶たない。売買契約時の告知義務として「水没」の文言を明記する規約がなく、知らないまま購入して後にトラブルに発展する事態も。そんな中で先月、水没車を巡り売買契約を解除したとして、支払い代金の返還を求めた訴訟の判決が名古屋地裁であり、水没歴が消費者契約法に定められた契約取り消しの根拠となる「重要事項」に該当すると認定する判決が言い渡された。業界内では車の公正取引のための規約の改正に向けた動きが進みつつある。

 「契約時の告知事項として、水没の事故歴の明記を定めた法律があれば、被害に遭わなかったのではないか」。提訴した名古屋市の男性(36)は憤りをあらわにする。名古屋地裁は、男性が弁護士と共に調べて突き止めた中古ワゴン車の水没の事実を証拠として採用し、岐阜市の中古車販売業者に代金271万円全額の支払いを命じた。男性は「本来自分で調べなくても購入前に顧客に知らされるべき」と、国会議員に法整備への働き掛けを求める意見書を提出した。

 日本オートオークション協議会(東京)は、水没車を巡るトラブルは2年ほど前から全国的に増えているとみる。担当者は「台風など風水害の増加で、水没した車が市場に出ることが増えたのでは」と推察。協議会に加入するオークション会場では出品者に水没歴の明示を義務付けているが「普通の事故車と違い、きれいに洗浄してしまえば分からない。水没を隠して出品する悪質な業者もいる」と明かした。

 県内の自動車整備業者が、オークションで水没の事実を隠した中古の高級車を購入させられたとして、名古屋市の個人に被害弁償を求めた別の民事訴訟も進行している。

 全国の中古車販売業者約1万2千社が入会する自動車公正取引協議会(東京)は、自動車販売の透明化を図るため、独自に設けている規約に既に盛り込まれていると説明する。「品質や性能などについて『実際のものよりも優良であるかのように誤認されるおそれのある表示』を禁止」と明記しており、そこに水没の事故歴を隠すことも該当すると主張。しかし、「規約に水没の事故歴を明記せずに売ることを阻む規定がない、と誤解が生じているのも事実」と担当者。一歩踏み込んで規約の中に「水没」という言葉を追加することも検討していくという。

 交通法規に詳しい高山俊吉弁護士(東京弁護士会)は「水没は自動車の基本的性能にダメージを与え、価値を下げるもの。契約解除の理由となる」と指摘。その上で「規約は消費者が安全な契約を結べるよう、業者に適切な表示を促すルール。今回のような詐欺まがいの行為を取り締まる法律ではない」として、「店選び」の重要性を訴える。

 JU岐阜(県中古自動車販売協会・県中古自動車販売商工組合)はトラブルを未然に防ぐため、「全国規模の協議会や連盟に入っている」「展示場や車の手入れが行き届いている」などと購入店を選ぶポイントを挙げる。

 【水没車】冠水車とも呼ばれ、日本自動車査定協会によると「室内フロア以上に浸水した」または「浸水の痕が複数確認できる」車。電気系統に影響を与え、エンジンがかからなくなったり、感電や車両火災が起こったりすることもある。シートやペダルに腐食やさびが発生するが、洗浄を行うことで消費者には分からない状態になっていることが多い。

最終更新日:11/30(月)8:38 岐阜新聞Web

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6377976

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