新型コロナウイルスの感染が国内で猛威を振るってから、間もなく2年。感染対策として打ち出された緊急事態宣言などの人流抑制策は、国内の感染拡大を抑え込んだ一方で、旅館・ホテルや旅行会社をはじめとする観光業界、時短営業や外出自粛の影響を受けた飲食店などの対面サービス産業を直撃し、関連産業を含めて経営体力に乏しい中小企業で倒産が相次ぐとみられていた。
ところが、足元の企業倒産件数は前年同月を大きく割り込む水準が続いている。このペースで推移した場合、2021年の倒産件数は6000件を下回る可能性が高い。年間倒産件数が5000件台となれば、1966年(5919件)以来55年ぶりとなる「歴史的低水準」となる。
ただし、企業の倒産リスク自体が低下しているわけではない。コロナ禍以降、企業の財務不健全化リスクが急激に上昇しており、その状況はリーマン・ショック当時に迫るなど、近時の倒産動向とは異なる傾向を見せている。
帝国データバンクが保有する財務データを基に、日本企業の経営破たんリスクをインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR、利払い負担に対する利益の比率)を用いて分析した。過去3年にわたってICRが1を下回る状態=利益から債務利払いが不能の状態が続いている企業を「経営破たん懸念企業」と定義し、全体に占める割合を算出すると、2020年度で7.36%に上った。全国の企業数が約400万社あるとされるなか、推計で約30万社が慢性的な経営の限界に陥っている可能性がある。
リーマン・ショック後以降の推移をみると、2009年度以降急激に上昇し、東日本大震災後の2011年度は10.18%を記録した。しかし、以降は金融円滑化法の施行・延長に加え、強力な金融緩和政策も重なって、16年度には5.44%まで低下した。以降は、金融円滑化法の実質的な終了もあって割合が上昇していたものの、それでも6%台にとどまっていた。しかし、2020年度は7%台と1年間で1.3ポイントも上昇した。この上昇幅はリーマン・ショック後の08→09年度(+1.4pt)に並んでおり、倒産件数急減の一方で企業の倒産リスクが急激に高まっている状況が分かる。
最終更新日:12/8(水)16:17 帝国データバンク