関西スーパーマーケット(兵庫県伊丹市)と百貨店大手「エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリング」(大阪市)の経営統合手続きを差し止めた神戸地裁決定について、大阪高裁(植屋伸一裁判長)は7日、関西スーパーが申し立てた保全抗告を認め、地裁の判断を取り消す決定を出した。決定はただちに効力が生じるため、両社は15日の統合を目指す。
経営統合の差し止めを求めて仮処分を申し立てたスーパー大手「オーケー」(横浜市)は、決定を不服として最高裁への許可抗告を高裁に申し立てた。高裁が認めれば、最高裁が判断することになる。
高裁はまず、株主総会の決議方法は法律に規定がなく、議長の合理的裁量に委ねられていると強調。投票方式を用いた議決には株主の正確な意思を反映させることが求められるとして、一連の経緯を検討した。
経営統合が可決された10月29日の関西スーパーの臨時株主総会では、ある法人株主が事前に提出した議決権行使書で「賛成」の意思表明をしていたことを理由に投票では白紙を投じた。高裁決定は株主の投票行動について、投票のルールが事前に周知されておらず、二重投票を避けようと誤って白票を投じたことはやむを得なかったと指摘した。
その上で、株主が事前に賛成の意思を示した事情を考慮する必要があると判断。植屋裁判長は「投票後に意見を変更したとは認められず、関西スーパー側が賛成票として取り扱ったことは許容され、法令違反や著しく不公正とも言えない」と結論付けた。
関西スーパーは総会でこの株主の票を賛成として扱った結果、賛成率は66・68%になり、可決に必要な出席株主の「3分の2」を上回ったと発表。関西スーパーの買収を目指すオーケーはこの集計に疑義があるとして、神戸地裁に仮処分を申し立てた。
地裁は11月の仮処分決定で、決議方法には「法令違反または著しい不公正がある」として差し止めを命令。関西スーパーはこの決定に対する保全異議を申し立てたが、地裁の同じ裁判長に退けられたため、高裁に保全抗告していた。
関西スーパーは11月下旬、法廷闘争の行方が見通せないことを踏まえ、筆頭株主のH2Oとの経営統合の予定日を12月1日から15日に2週間延期すると発表。一方、第3位株主のオーケーは経営統合が中止された場合、関西スーパーを株式の公開買い付け(TOB)で買収する方針を表明している。【芝村侑美】
◇大阪高裁決定の骨子
・経営統合手続きを差し止めた神戸地裁決定を取り消す
・株主の意思を正確に把握して議決に反映させるべきだ
・株主が事前に賛成の意思表明をしていた事情などを考慮すると、票の取り扱い変更は許容される
最終更新日:12/7(火)22:08 毎日新聞