鬼滅効果「吉原巡礼」街の思い

アニメ「鬼滅の刃」続編の「遊郭編」が5日、フジテレビ系でスタートする。「吉原遊郭」がモデルで、漫画では花魁(おいらん)や花街、楼主、足抜け、切見世、女郎屋といったワードが登場。東京・台東区の元新吉原遊郭周辺には鬼滅グッズを持ったファンが神社に参拝に訪れるなど、アニメ効果が見られている。一方で、遊郭を子どもに問われた場合、どのように答えていいか、悩む大人も多い。吉原商店街の不破利郎会長に話を聞いた。(取材・文=水沼一夫)



 浅草の北方に鎮座する吉原神社。普段は出勤前の女性の参拝姿も見られる地元の守護神に、最近、鬼滅ファンが増えている。

「御朱印も多いんですけど、今度鬼滅で吉原が取り上げられるからって来る方が多いです。若い方が多いですよ。すごく分かるのは鬼滅のものをつけている。鬼滅で来た? と聞くと、そうなんですって言う人が多いです」(関係者)。共にまつられる弁財天のお使いが蛇であることから、「よしわら」の「よし」の字を蛇に見立てる珍しい御朱印や、吉原伝統の「狐舞ひ」にちなんだストラップなどを購入していく。狐のお面が印象的で、「鬼滅の狐っぽいお面に見えるようです」という。

 アニメの舞台になると、しばしば起こる“聖地巡礼”。その波は、吉原であっても例外ではなく、「遊郭編」の放送前から打ち寄せているようだ。

 江戸時代に栄えた吉原遊郭は、当初日本橋に置かれたが、1657年の明暦の大火後に、吉原に移転された。前者を「吉原遊郭」、後者を「新吉原遊郭」と呼んで区別している。現在は大人の遊び場のイメージが一般的だ。

 不破さんは、遊郭編の予告編映像を見て、リアルな再現ぶりに目を奪われたという。

「(吉原)大門が出てくるんですよ。大正時代のきれいなネオンがついている大門が。これは結構、作り込んでいるなと思いました。史実にのっとって作っている」

 放送の中で、吉原のどんな場所が登場するのかも楽しみにしている。

 一方で、「遊郭」を題材にしていることで、放送決定後には、ネット上で議論が巻き起こった。子どもへの影響から「小学生に見せて大丈夫なの?」「園児にどう説明しようか…」などの声が飛び交い、答えに窮するツイートも見受けられた。

 アニメできらびやかな雰囲気で描かれることはあっても、実際は華やかだけではない部分もある。反響によって注目を浴びることを望んでいない人もいる場所だ。子どもから大人まで幅広い世代に人気の鬼滅の刃。アニメの開始により、遊郭そのものへの関心が高まり、子どもから尋ねられたらどう答えればいいのか?

不破さんは「説明は難しいと思いますけど、江戸時代の文化の花が開いたところが遊郭」と話す。

 遊郭は江戸の大衆文化形成の発信地だった。「吉原を核にしたとき、歌舞伎や邦楽、お茶やお花、俳句、狂歌、全部つながっているんですよ。芸者も吉原から出たもの。吉原がなかったら歌舞伎の演目も相当減っていると思う」。非日常な空間が育んだ文化的な側面に目を向けてほしいと訴える。

 遊郭編で、音柱・宇髄天元や炭治郎は花魁に化けていた上弦の鬼・堕姫(だき)と対峙(たいじ)する。花魁については、「ファッションリーダーだった。今だったら乃木坂46みたいな、そういうアイドル的な存在だった」。容姿に秀でるだけでなく、芸や俳句、三味線、囲碁まで何でもこなす“遊女のエリート”で、大きな影響を与えたという。

 遊女は浮世絵の画題としてもポピュラーで、髪型や服装は年代ごとに異なり、地方の流行創出にもひと役買っていた。

「当時、参勤交代で大名が江戸に来ると、家来ら侍が吉原で遊ぶ。そうすると、『こういう着物があった』というのをお国で話す。そうすると、地方で吉原の物がはやったりする。旗本の奥方や大名の奥方がそれを着たくてまねしていたというのもある。お土産には浮世絵を買って帰るので、『江戸にはこんなきれいな女の人いるんだ』となって、そこで吉原がまた全国区になっていった」

最終更新日:12/5(日)21:42 ENCOUNT

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6411579

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