原料高騰 ケーキや玩具に影響は

11月も中旬を過ぎ、早いところでは街にイルミネーションが灯り始めるなど、少しずつクリスマスムードが漂ってきている。一方、世界的な原油価格の高騰やコロナによる生産体制への影響などにより、おもちゃやケーキなど、クリスマスの定番商品の原材料費が軒並み高騰している。本格的なクリスマス商戦を前に、品薄や値上がりの心配はあるのか? メーカーや業界関係者に聞いた。

「値上げの予定はありません。主力商品を中心に部材の確保に取り組んでおり、適量を供給できる予定です。ただ、コロナがどのように影響するのか見通せないところもあり、不測の事態が起こることもありうる。全商品をカバーできるか心配もあるが、子どもたちに“サンタ不信”を生まないように各部署で取り組んでいます」

 先の伊吹さんは、心配なのは「年末に向けての品薄」と指摘する。

「アメリカの玩具協会の会長はクリスマス商戦ではおもちゃの価格が去年より5~10%値上がりするだろうといっていますが、日本では夏に主力商品を投入しており、それを今から値上げするというのは難しい。コスト増加分の価格転嫁は、来春以降、新商品を投入するときでしょう。それより今年のクリスマスで心配なのは品薄ですね。商品の供給量を十分に確保できない可能性があり、売れ筋商品ほど品薄になりやすくなる恐れがある。消費者には早めにプレゼントを買ってもらうことをお勧めします」

■クリスマスケーキは「ひっそりと値上げ」も

 一方、原材料費高騰の影響を大きく受けているのがクリスマスケーキだ。

「これまで企業努力で我慢してきたが、このままでは大赤字でつぶれてしまうという危機感があり、値上げをしました」

 こう話すのは、神戸洋藝菓子ボックサン代表の福原敏晃さん。ホームページで「卵、乳製品、小麦粉、砂糖など原材料価格が高騰しており、値上げに踏み切らざるを得なくなりました」と告知し、10月中旬からケーキなどを値上げした。

 ケーキの原材料費は軒並み増加している。輸入小麦の政府売渡価格は、今年1月は1トンあたり4万9210円だったのが、4月には5万1930円、10月には6万1820円へと跳ね上がった。中国での需要の高まりや収穫高が悪化していることが背景として指摘されている。

 たまごについては、鳥インフルエンザの流行による殺処分などが影響し、JA全農たまごが公表しているMサイズの1キロ当たりの価格(東京)では、今年1月に平均142円だったのが、今年11月は平均205円(18日時点)にまで上がっている。他にも果物や乳製品、砂糖なども値上がりしている。

ボックサンでは昨年3080円(税込、約12センチ)で売っていたクリスマスケーキを、今年は3240円で販売している。福原さんは言う。

「クリスマスケーキに使う飾り用の砂糖菓子も、ベトナムがコロナでロックダウンした影響で輸入が止まってしまい、国産のものに代えました。どうしても費用は高くならざるをえません。クリスマスケーキは昨年より5~10%は値上げしています。値上げを公表するお店は多くないので、ひっそりと値上げしているところもあるんじゃないでしょうか」

■クリスマスチキンは輸入が減少

 ケーキと並んでクリスマスの食卓には欠かせない「チキン」はどうか。

 農畜産業振興機構が財務省の統計をもとにまとめた資料によると、今年1月の輸入の冷凍鶏肉の価格は1キロあたり186円だったのが、9月には232円に上昇。背景には、輸入鶏肉の多くを占めるタイ産の鶏肉が減少したことがあると見られている。タイでは7月半ばからロックダウン(都市封鎖)を実施。9月の輸入量は8300トンで前年比87.1%と急減している。

 食品スーパー「アキダイ」(東京都)では例年、クリスマス用にタイ産のローストチキンを500本仕入れていたが、今年は卸売会社から「一本もない」と言われたという。秋葉弘道社長は言う。

「値段はなるべく上げないように努力しているが、輸入鶏肉の仕入れ価格は上がってる。ローストチキンについては中国産やアメリカ産で代わりに対応しようとしているが、しっかりと確保できるかまでは確証はないのが率直なところです。仕入れできるように祈るだけですね」

 日本ケンタッキー・フライド・チキンは「今のところ影響はない」と言う。契約農場から国産の鶏肉を仕入れているため、市場からの影響は受けにくいそうだ。広報担当者はこう語る。

「当社にとってクリスマスは一年で一番盛り上がる時期です。一年中、クリスマスに向けて準備をしており、数量も確保しており、値上げの予定はない。ここでしっかりと商品を届けないでいつ届けるのか、という気持ちで取り組んでいます」

 クリスマスを待ち望む子どもたちや“サンタ”をがっかりさせないよう、メーカーも店も努力を続けているようだ。(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

最終更新日:11/20(土)13:47 AERA dot.

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6410283

その他の新着トピック