センチュリーに乗る喜びとは?

「センチュリーに知事が乗るのはけしからん!」と今秋、にわかに全国で巻き起こった公用車論争。このVIP御用達の最高級車をマイカーとして所有する、巷のセンチュリーオーナーたちは何を思うのか? 夜な夜な開かれるオフ会に潜入して聞いてみた。トヨタ・センチュリーに乗る歓びとは?(北林慎也)

センチュリーは、トヨタブランドの最上級に位置づけられる大型セダン。
初代は1967年に発売された。車名は、グループの祖業である自動織機事業の創始者・豊田佐吉の生誕100年と、維新からの「明治100年」にちなむ。
1997年に2代目となり、2018年に現行の3代目となった。

それぞれ20~30年前後、と異常に長いモデルライフから分かる通り、購入したオーナーが自らハンドルを握るのは想定しておらず、限定的な用途を念頭に作られている。
世界的な分類に従えば、このクルマは「ショーファードリブンカー」とされる。職業運転手(ショーファー)が運転するクルマ、という意味だ。
つまり、皇族や政治家、財界トップを後席に乗せてお抱え運転手が走らせる、VIP御用達カーである。

初代と2代目はまったくの専用設計。足元の広さや座り心地、乗り降りのしやすさなど、徹底的に後席ファーストの思想が貫かれる。
特に2代目は、いまだ国産車で唯一のV型12気筒エンジンを積む稀有な存在だ。
3代目は、レクサスLS600hとプラットフォームを共用するハイブリッド車となったが、いまだドメスティックな国内専用車であり続ける。

銀モールやメッキ、木目を多用した、抑揚の少ない穏やかな水平基調の内外装とスタイリングは、線香の匂い漂う仏壇を思わせる和テイストに満ちている。
グローバル高級ブランドの「レクサス」を名乗らないのはおろか、楕円形のトヨタマークすらも付いていない。
代わりに、神話上の霊鳥である鳳凰をモチーフにした専用エンブレムが随所にあしらわれる。

最近、そんなセンチュリーを巡って世間が喧しい。その本来の使われ方、つまり「公金で偉い人を乗せる」ことの是非について議論が沸いている。

兵庫県が昨年8月、知事と県議会議長のリース公用車を、レクサスから最新型のセンチュリーに変更。かたや山口県は、皇族の来県時に使う「貴賓車」として歴代センチュリーを購入してきたが、肝心の貴賓車としての使用実績はほとんどなく、県議会議長の公用車として使っていた。
地方自治体の公用車を巡るこれらの実態が報道で明らかになると、「税金の無駄遣いでは」などと疑問や批判の声が上がった。

これに対して兵庫県の井戸敏三知事は、記者会見や議会答弁で「県土が広大で山道も走るため、馬力があって故障しない走行性能が必要」「その程度の排気量(5000cc)が知事車にふさわしい」などと反論。
さらに、実際に乗れば必要性が分かるとばかりに「乗ってみてください」と繰り返すと、県内外から多くの反発を招き、県庁には電話が殺到した。
そして、公費でセンチュリーを賄う是非を巡る議論は、国会議員の黒塗り公用車にも飛び火しつつある。

最終更新日:11/24(火)21:32 withnews

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6377410

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