「東映京都撮影所」閑散の今

今年で開業70周年を迎えた『東映京都撮影所』。かつては役者やスタッフ、隣接する『東映太秦映画村』の来場者であふれかえった町も、時代の流れやコロナ禍によって閑散としてしまった。そして今、『水戸黄門』や『科捜研の女』など、数々の名作を生み出した聖地に、ちょっとした異変が起きている―。



「今の映画界の土壌からすると、この規模の本格的時代劇はなかなか作られづらい現状です……」

 現在公開中の映画『燃えよ剣』の舞台挨拶で、このように語るのは主演の岡田准一だ。

「昭和の時代に映画やテレビで人気を博した“時代劇”というジャンルも、'11年にTBS系の『水戸黄門』が終了してからは民放のレギュラー枠が消滅してしまいました」(スポーツ紙記者)

存在意義が失われつつある京都撮影所だが、閉鎖の可能性はあるのか。東映に問い合わせると、

「広報に確認しましたところ、そのようなお話は聞いておりません」とのことだった。

 しかし、実際に太秦へ行って周辺を取材してみると、厳しい現実があった。撮影所関係者はため息交じりで語る。

「現在は東映の専属俳優でも月に1本撮影があるかどうかなので、月収は3万円以下の人がほとんど。仕事がない役者は映画村でバイトなどもしていましたが、今は人が入らなくてショーすらやっていませんからね。時代劇が盛んだった50年以上前はエキストラでも1本5000円の3本撮影がざらで、ちょっとした斬られ役でもサラリーマンの数倍稼げていたそうですから、今では夢のような話です」

 裏方のヘアメイクや大道具・衣装スタッフなどはすべてアルバイトかフリーランス。撮影がなければ収入はゼロで何の補償もない。

「現在、東映創立70周年を記念し、木村拓哉さん主演で時代劇の撮影も進んでいますが、この1本だけでは今の窮状は変わりませんよ。複数の撮影をコンスタントに続けなければ、スタッフは生活できません」(同・撮影所関係者)

 施設が巨大すぎるため、持て余されているようだ。

「現在、撮影所内にスタジオは11ありますが、東映が主に使用しているのは1つだけ。あとは、貸しスタジオとして『松竹』や『Netflix』に貸しています。そんな状況ですから、今年の夏は東映としての撮影はゼロ。多くのスタジオが空いたままで、荷物置き場になっています」(別の撮影所関係者) 

 撮影所が寂れてしまったことで、周辺の活気も喪失。かつて撮影所近くの通りには飲食店が並び、映画関係者でにぎわっていたが、今は喫茶店が1軒残っているだけだ。

「以前は、勝新太郎さんや、藤田まことさんが近所を歩いていました。飲食店に役者やスタッフが集まり、一般客は入れない状況でしたが今は一般客ばかり。たまにスタッフが来ては“仕事がない”と愚痴をこぼしていますよ」(喫茶店の常連客)

 コラムニストで時代劇研究家としても活動するペリー荻野さんは、撮影所の閉鎖は映画やドラマの衰退につながるのではないかと危惧する。

「東映の時代劇はもちろん『科捜研の女』シリーズは京都の立地を活かしてます。あの撮影所で撮った作品には東京とは異なった独特の雰囲気がありますよね。そのような作品が撮れる場所がなくなるのはとても惜しいです」

 映像界全体の影響も大きい。

「東映京都には『水戸黄門』の第1話から出ている殺陣の専門集団『東映剣会』がありますが、刀の構え方や立ち居振る舞いは伝統芸能レベルの財産。ほかにも伝統的な髪を結う結髪師や、わらじのひもの結び方といったノウハウなどの技術が蓄積されています。そういったものが受け継がれないとしたら、日本映画界の損失になると思います」(ペリーさん)

 日本映画の黄金期を支えてきただけに、今後の業績が好転することを信じたい。

最終更新日:11/15(月)12:21 週刊女性PRIME

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6409769

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