コロナで加速 缶コーヒー離れ

新型コロナの影響で、今年は缶コーヒーの売り上げが大きく落ちている。そして、業界では追い打ちをかけるような異変も起きている。缶コーヒーの新商品やリニューアル商品の数が激減しているのだ。例年であれば、夏の終わりから9月にかけて各社が缶コーヒーの新商品発表会を実施していたにもかかわらず、コロナ禍であることを踏まえても、今年はほとんどなかったといっていい。



 容器入りのコーヒー飲料をめぐる環境は激変した。外出自粛要請のあった4~5月に、都心部を中心としたコンビニエンスストアやオフィス内に設置している自動販売機での売り上げが減少。一方で、在宅勤務者の増加で家庭内需要は高まり、スーパー・量販店で2リットルなど大容量の飲料の販売は増加した。

2018年には、前年の「クラフトボス」のヒットもあり、各社が相次いで参入して一気に市場が拡大した。仕事中に喫煙するような短時間休憩が減り、デスクにいながらリラックスする働き方が増える中で、再栓できる容器の価値が高まり、ちびちびだらだら時間をかけて楽しめる “ちびだら”飲みができるペットボトルコーヒーが、コーヒー飲料市場の主役になった。

 ペットボトルコーヒーの勢いは、容器別の構成比の実績にも表れている。

 清涼飲料市場全体の容器構成比は、液量ベースでペットボトルが75.2%となり、缶容器の11.9%を大きく上回っている(2019年、全国清涼飲料連合会調べ)。

 一方、コーヒー飲料は、缶容器が48.0%でペットボトルの43.9%を上回る。だが、10年前は缶容器が70.8%でペットボトルが16.5%と圧倒的な差があった(2010年、同)。コーヒー飲料でペットボトルが市場を牽引するトレンドは加速している。

 あるメーカー担当者は、「コロナ禍の環境が、より私たちの戦略を明確にし、よりやらなくてはならないことをはっきりさせた。環境変化をしっかり捉えながら戦略を考えたい。今後はペットボトルコーヒーがブランドの中心となるだろう」とし、缶容器が中心だったこれまでの商品戦略を変更する考えを語る。

コカ・コーラシステムは、「ジョージア ジャパン クラフトマン」(500mlPET)を展開するとともに、カフェを利用する20~30代をターゲットに、3月にカフェ品質を謳う「ジョージア ラテニスタ」(280mlPET)を発売し、10月には「猿田彦珈琲」監修の「ジョージア ロースタリー ブラック」(同)も投入。「ジョージア」のペットボトルコーヒーは1~8月累計で2ケタ増を達成し、存在感を高めている。

 キリンビバレッジの「ファイア ワンデイ ブラック」(600mlPET)は、常温でもおいしいと味わいが評価され、取り扱い店舗が増えたこともあり今年1~8月累計で前年比20%増と好調。

 UCC上島珈琲は、コーヒー専業メーカーとして従来からレギュラーコーヒー品質のペットボトル商品を展開してファンがついている。

 ペットボトルコーヒーはコーヒー飲料の主役になったことで、幅広い世代のニーズに応える必要が出るため、今後は容量や中味などで多様化していくだろう。

そこで各社は、従来から愛飲しているヘビーユーザーとの絆づくりを重視し、働く人を励まし、楽しませるWEBコンテンツやキャンペーンを継続強化している。

 大手2社をみると、コカ・コーラシステムは、対象商品において、当たりが出たら対応自販機でもう1本もらえる「ジョージア“運だめし”キャンペーン」を9月から開始した。SOT缶は「エメラルドマウンテン」など3品が対象で、赤いプルタブがクジという、遊び心のあるユニークな企画を展開している。

 サントリー食品は、「コロナがどうあれ、缶コーヒーの“ボス”は、変わらず今日も“現場で働く人”に寄り添い続ける」とする。9月は香料不使用で力強い香りとコクの「スピリットオブボス」を発売。ヘビーユーザーに向けたマーケティング活動を継続強化し、自販機キャンペーンやWEBコンテンツを充実させている。

 また、缶コーヒーは新商品こそ減っているが、商品パッケージのデザインを工夫するメーカーが増えてきた。

 代表例としては、「ワンダ」の“進撃の巨人”や、「ダイドーブレンド」の“鬼滅の刃”デザイン缶がある。主力商品のパッケージデザインに、ユーザーの好む人気アニメキャラクターを採用することで、トライアルとリピート購買をねらった施策だ。他の既存商品も品質のブラッシュアップやパッケージ変更もユーザーの声を聞きながら毎年行われている。

 ここまで各社が「缶コーヒー」に注力する背景には、仕事とコーヒーは切っても切れない関係があるためだ。「仕事にメリハリをつけるには、やはりコーヒーが役立つことを多くの人が気づいており、それを簡単に飲める容器入りのコーヒーで何とか解決しようという動きが見られる」(大手メーカー担当者)。

 ヘビーユーザーの多い缶コーヒーは、長い間、働く人々から支えられることでブランドを育成してきた。現在はペットボトルコーヒーが販売構成比を伸ばしているが、今後どれだけ市場を席巻しても、大手各社のコーヒーブランドは、缶コーヒー生まれであり、ブランド力を強化するためにも各社の軸足は缶コーヒーから離れることはない。

 ユーザーの変化により、缶コーヒーの市場規模が徐々に縮小したとしても、圧倒的に多いヘビーユーザーの期待を裏切ることがないように、ブランド力を生かし、ユーザーとの“絆”を深めるための活動は、これからも続く。

 飲みきりサイズにより短時間で気分転換ができ、寒い冬には手を温められ、誰かとの会話のきっかけにもなっていた缶コーヒーは、これからもヘビーユーザーの“仕事の相棒”として存在し続けるだろう。

最終更新日:11/24(火)17:33 文春オンライン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6377400

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