敵対的買収の動き活発化 背景は

企業に対する敵対的買収の動きが活発化している。企業の合併・買収(M&A)助言のレコフ(東京)によると、買収や出資拡大のための敵対的TOB(株式公開買い付け)などが今年は10月までに9件と、年間最多だった2006年の7件を既に上回り、銀行が対象となる異例のケースもある。増加の背景を探った。



 ―敵対的買収とは。

 相手企業の取締役会の同意を得ずに、経営権取得を目的に株を買い付けることだ。最近では、新聞用輪転機大手の東京機械製作所に対して投資会社アジア開発キャピタルが、新生銀行にインターネット金融大手のSBIホールディングスが、それぞれ仕掛けている。取得方法はアジア開発が市場で株を買い集めたのに対し、SBIはTOBを実施している。

 ―結果は。

 東京機械は臨時株主総会で株主が買収防衛策発動を支持したが、司法での争いが継続。新生銀は25日の臨時株主総会で防衛策発動の是非を諮る。

 ―なぜ増えている。

 上場企業はコロナ禍で、保有する現金やすぐに現金化できる債券などを増やしており、過去最高の600兆円規模に上るとされる。大和総研の鈴木裕主席研究員は「潤沢な資金があり、同業他社や他地域の企業を買収しようという発想が生まれやすい。資金の有効活用を求める株主からの圧力もある」と説明する。

 東京証券取引所の来年4月の市場再編や企業統治指針の強化で、企業同士の株の持ち合い解消などが促されていることも後押ししている。少子高齢化やデジタル化の加速により、企業再編が進んでいる側面もある。M&Aは経営改革のスピード、つまり時間を「買える」利点があり、レコフの調べでは、友好的買収も加えると今年は過去最多だった19年の4088件を超す勢いだ。

 ―敵対的買収への対抗策は。

 買収防衛策の発動が一つの方法だ。事前に導入しておくケースと買収表明を受けてからの事後型がある。東京機械と新生銀は、買収者の持ち株比率を引き下げる「ポイズンピル(毒薬条項)」を買い付けの動きが分かった後に導入した。ただ、防衛策は「経営者の保身目的」との批判が強く、レコフによると、導入した上場企業は08年の569社をピークに今年10月末時点で275社に半減している。

 ―株主はどう判断すべきか。

 買収を受けた側と仕掛けた側のどちらが企業価値を向上できるか、見極めが必要だ。しがらみや短期的な利益のみで判断すれば、株価の下落や業績低迷につながりかねず、損をする恐れもある。

◇今年の主な敵対的TOB・買収
買い付け者       対象      手法     結果
日本製鉄        東京製綱    TOB    成功(出資拡大)
アジア開発キャピタル  東京機械製作所 市場買い付け 防衛策発動へ、司法係争中
SBIホールディングス 新生銀行    TOB    防衛策発動?

最終更新日:11/14(日)15:25 時事通信

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6409706

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