アイドル接客 串カツ田中の模索

コロナ禍の影響で飲食業界は苦境に立たされてきた。人びとの行動制限、飲食店の時短制限が解除されつつある今も、予断を許さない。そんな中で、「アイドル」に新たな活路を見出すチェーン店があった。



 全国300店舗をかまえる「串カツ田中」だ。2021年6月に東京・秋葉原のメイン通りにある従来店舗をリニューアルし「アキバあいどる店(@kushi_akiba)」をオープン。

 店舗を運営するまでの経緯、ウィズコロナへの思いとは――。同店を企画した株式会社串カツ田中 営業本部 東日本営業部長の谷川佑隆氏、そして同店で働くアイドル店員にも聞いた。

アキバあいどる店の従来店舗は、当初、不採算店舗として撤退も視野に入れていたという。しかし、退去にもテナントの違約金などコストがかかる。コロナ禍の社内では「とにかく経費削減。乾いた雑巾すらも絞らなければならないほど」の空気感があったと、谷川氏は伝える。

 その活路として見出したのがアイドルの選択肢。しかし、サブカルチャーの発信地として知られる秋葉原には、アニメやゲームといった文化も根付いている。その中でなぜ、アイドルに決まったのだろう。

「初期段階では『ゲーム』や『アニメ』も視野に入れていました。ただ、作品やキャラクターとコラボレーションするコンセプトカフェでは『串カツ田中らしさ』がなくなってしまう。また、アニメやゲームは流行に左右されるとの判断で、難しいという結論へ至りました」

ファンに笑顔を届けるスタッフは、現役アイドルや将来の活躍を夢見るアイドルの卵とルーツも様々。ただ、コロナ禍では人材の獲得にも苦戦したと、谷川氏は言う。

「アキバあいどる店について公に初めて告知したのが2021年1月です。ただ、4月オープンの予定が緊急事態宣言の影響で6月にずれこみ、採用しても働けず辞退する子たちもいました。弊社としてもいつオープンできるか分からない状況でしたし、そもそも『働きたい』という意思に加えて『アイドル』に関心がある子となると、絶対数が限られていたのもネックでした。

 そのためできるだけ間口を広くし、現在はルーツも様々に色々なスタッフが働いています。事務所に所属しているか否かに関わらず、スタッフ同士の繋がりでデビューのチャンスをつかむ子もいます。店舗としては採算が合えば目標は達成されるので、お客さまへ日頃の活動を告知したり、アピールの場として自分のステップアップにも役立ててもらいたいと考えています」

オープン1年目の串かつ田中 アキバあいどる店。谷川さんはこの先に向けて、自分たちの課題と展望を語る。

「店舗のコンセプト自体が初めてのケースですし、なおかつコロナ禍の影響もあったので、現状で上手く行っているのかどうかはまだ分かりません。課題は、集客面すべてです。調べた限りで秋葉原に約400軒近くもあるコンセプトカフェが競合になるため、スタッフとファンの方々との距離を保ちながらどうオペレーションするか、売り上げをどう保っていくべきかを模索しています。

 前例はないですが、採算が取れそうであれば求められている証拠。現在、店舗展開をしている池袋や大阪もコンセプトカフェがありますし、コロナ禍の影響が解消された段階での多店舗展開もアイデアレベルでは検討しています」

 大手飲食チェーンがコロナ禍での起死回生を狙い打ち出した、アイドルをコンセプトにした居酒屋。ファンに愛され続けるのか。明暗を分けるのはこれからだ。

<取材・文/カネコシュウヘイ>

最終更新日:11/11(木)8:47 bizSPA!フレッシュ

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6409442

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