ビジネスホテルの朝食 原価は

ホテルが朝食で特色を出そうとしていることは、宿泊者としてひしひしと感じる時がある。インバウンド活況時からコロナ禍という流れの中で露呈した宿泊施設の供給過多にあって、他の施設にない特色を出して差別化を図るのは当然。新たな施設の建設やリノベーションを施せば特色は強く打ち出せるが、コストはバカにならない。つまるところ朝食は差別化のアイテムとして取り組みやすい部分なのだろう。



 「ピーク」と「エンド」の経験が物事の印象を大きく左右する「ピークエンドの法則」がある。宿泊者からしても、ホテルステイで最後に体験したことの印象が良いとそのホテル全体がよく見えるものだ。そうした部分でもホテルが朝食に力を入れることはある種理にかなっていることのように思える。

 宿泊施設やホテルといっても多種多様。ホテルは「シティーホテル」「ビジネスホテル」「リゾートホテル」など、さまざまなカテゴリーがあり、われわれも旅のスタイルからホテルを選ぶときの基準にしている。では、宿泊施設ごとに朝食の特色はあるのだろうか。“高級”と言われるシティーホテルやリゾートホテルは豪華な朝食で、宿泊特化のホテルが簡素かというと一概にそうとは言えない。

 確かに元来はそうした傾向はあったのだろうが、ビジネスホテルでもハイクラスな施設が際立ち、“朝食合戦”が激化した結果、シティーホテルの領域に“浸食”するような豪華な朝食に接することも増えた。内容ばかりではない。これまで「シティーホテル朝食」の十八番であった卵料理を目の前で調理してくれるような“実演”をビジネスホテルでも見かけるようになった。

先ほどから“無料朝食”と表現しているが、無料朝食について記事を書くと「無料とはいえ宿泊料金に含まれているだけで厳密には無料ではない」というツッコミをいただく。その通りであるが、有料朝食との対比表現としての無料朝食というワードはホテル側でも打ち出している表現である。一方、有料朝食も、これは有料といえるのか? と感じる時がある。有料朝食は宿泊とセットで朝食付きプランとして売られているケースが多い。

 本来ならば、素泊まりの宿泊料金に朝食の定価を上乗せするからこそ“有料朝食”と表現するものだ。しかし、朝食付きプランを見ると、本来の朝食の定価は厳密に上乗せされておらず、かなり割り引かれているパターンが当たり前だ(時に有料なのにプランとして無料で付いてくることも)。“朝食を付けるとお得ですよ”というアナウンスにも見える。また、チェックイン時に「前日なら朝食券を安く買える」といった案内もよく見かける。

 宿泊客ではなく、朝食だけを食べに来るゲストは当然定価を支払うわけであるから、定価は朝食の価値を表明するある種“記号”的側面もあるのだろう。また、宿泊客へのサービスという面では、選ばれるホテルとなるための一つのアイテムとして力を入れる朝食をセットにしたプランでお得感も打ち出し、予約客数の増加につなげたいというホテル側の強い思いを感じる。

 ところで、ホテル朝食といえば「ブッフェスタイル」が定番で、事実人気がある。ブッフェスタイルを採用した場合、しない場合によるホテル側のコスト負担についてはここで触れないが、ホテルが朝食にどれくらいの原価をかけているのかは気になるところだ。

 ホテル朝食の今について前置きが長くなったが、今回は宿泊特化タイプのホテル朝食(ブッフェスタイル)について深掘りしたい。

最終更新日:11/5(金)8:51 ITmedia ビジネスオンライン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6408836

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