米連邦準備制度理事会(FRB)は3日、米国債などを大量購入して市場にお金を流す「量的緩和」の縮小開始を決定した。現在は月1200億ドル(約13・7兆円)の資産購入量を11月から毎月一定ペースで減らし、2022年6月をメドに資産購入を終了する。新型コロナウイルス禍からの景気回復と急ピッチの物価上昇が進む中、金融政策の正常化に踏み切った。
金融政策を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)で全会一致で決定した。政策金利を0~0・25%とする事実上のゼロ金利政策は維持した。パウエル議長は会合後の記者会見で「景気回復が進展しており、資産購入を縮小する時期に来たと判断した」と述べた。
FRBは新型コロナウイルス感染拡大が本格化した20年3月にゼロ金利と量的緩和を開始。量的緩和では、金融市場に大量のお金を流すことで市場機能を維持するとともに、金利を抑制して景気を下支えした。当初は無制限で購入し、20年6月から米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を月400億ドルペースで購入していた。
この日の決定では、FRBは11月と12月に国債は100億ドル、MBSは50億ドルずつ購入額を減らす。その後は「毎月同様のペースで縮小することが適切」とし、22年6月にも購入量がゼロになる見通しだ。ただ、経済状況が変化した場合は「購入ペースを増やしたり減らしたりする用意がある」とした。償還期限を迎えた債券には再投資し、FRBの保有資産は現行水準を当面維持する。
FRBはリーマン・ショックに伴う金融危機後の08~14年に量的緩和を実施。その後の景気回復を受け、14年1月から10カ月かけて資産購入ペースを月850億ドルからゼロへと縮小した。今回は14年当時のほぼ2倍の速さで資産購入ペースを縮小する。
FRBは足元で3・6%に上昇している高インフレに歯止めがきかなくなることを警戒しており、必要があればすぐに利上げできるよう量的緩和の終了を急いだ。パウエル議長は、高インフレが予想以上に長期化していることを認めつつ、「経済再開が進めば物価上昇は2%目標の水準に低下する」と従来の見解を繰り返した。
FRBが量的緩和の終了を決定したことで、今後の焦点はゼロ金利を解除する時期に移る。
FRBは20年9月、ゼロ金利解除の判断基準として、①完全雇用に達する②インフレ率が2%に上昇する③インフレ率が当分の間、2%を適度に上回る軌道に乗る――の3条件を決定した。このうち未達は「完全雇用」だが、パウエル議長は「昨年来の雇用改善ペースが続けば、(22年後半には)完全雇用に達する可能性は十分ある」と踏み込んだ。FRBが9月に公表した金利見通しでは、FOMCメンバーの半数が22年の利上げを想定しており、金融市場はすでに「22年末までに利上げ2回」を織り込んでいる。【ワシントン中井正裕】
最終更新日:11/4(木)10:04 毎日新聞