エンジン車排斥で車社会は?

欧州をはじめ、世界最大の自動車市場を誇る中国、米カリフォルニア州などが、ガソリン車、ディーゼル車の新車販売を2030~2040年にかけて禁止する政策を打ち出してきている。



  菅義偉首相は2020年10月26日に開会した臨時国会の所信表明演説で、国内の温暖化ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」とする方針を表明した。

  次期アメリカ大統領のジョー・バイデン氏も2020年1月の大統領就任初日に地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰の手続きを取る見通しで、2050年までに温室効果ガスの実質排出ゼロを目指すことも公約に掲げている。

  また中国の自動車汽車工程学会は、2020年10月27日に発表した「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」に基づき、2035年にはガソリン車をゼロ、HV車は50%、新エネルギー車(EV、PHV、FCV)を50%とする目標を掲げている。

  これを受けて中国政府は2035年をめどに新車販売のすべてを環境対応車にする方向で検討していく模様だ。

  さらに2020年11月17日には英国政府が2035年にガソリン車、ディーゼル車の新規販売を禁止するとしていた計画を5年早めて2030年にし、HV車に関しても2035年禁止を維持。温暖化ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする目標の達成に向け、EVの普及を推進する方針を固めた。

  このように2020年下半期に入り、脱炭素化社会に向けての動きが急加速してきている。

  信じたくないが、このままいけば欧州各国が打ち出してきているガソリン車、ディーゼル車の新車販売禁止まで、あと10年しかない。

  そこで本当にあと10年でガソリン車、ディーゼル車に乗れなくなってしまうのか、モータージャーナリストの国沢光宏氏が解説する。

 
文/国沢光宏
写真/ベストカーweb編集部 トヨタ 日産 スズキ ボルボ

ここにきて再び「地球温暖化ガスを排出しないようにする! 」と動きだしている。菅義偉首相は就任直後に「2050年に排出ガスゼロを目指す」と発言した。

  中国が2020年10月に「2035年に電気自動車5割。ハイブリッド5割」という政策を打ち出し、11月にはイギリスも突如、エンジン車の販売禁止時期を5年間前倒しして2030年からにした。直近の状況はどうなっているのだろう? 

  まずエンジン車の販売禁止措置だけれど、各国の動きを見たら2030~2035年に集中している。

  こう書くと「我が国は2050年と言っている。少し遅い」みたいなことを考えるだろうけれど、日本の場合「カーボンニュートラルが2050年」となってます。つまり2050年には排出ガスを増やさないということ。エンジン車の全廃を意味する。

  2050年でエンジン車を全廃するためには、クルマの寿命を考えたら2030~2035年にはエンジン車の販売を止めなければならない。2045年にエンジン車を買っても5年しか乗れないですから。

  クルマの寿命を15年とすれば2035年からエンジン車は売れなくなると考えていい。一方、イギリスの規制だと、2030年までエンジン車を売ってよい。

  ほとんど同じですね。いずれにしろ世界的な流れを見ると、新型コロナ禍による景気の低迷を受けながらもエンジン車全廃の方向に向かっていることは間違いない。

文/ベストカーweb編集部

  最後に、自動車メーカーの動きはどうなっているのか紹介しておきたい。欧州連合は2021年の燃費規制を強化。欧州で販売するメーカー平均で、走行1kmあたりの二酸化炭素(CO2)排出量を95g/km以下に抑える必要があるというものだ。

  これはCAFE(Corporate Average Fuel Economy)、企業平均燃費とも呼ばれ、自動車メーカーが販売する全モデルの平均燃費を定めて基準を算出し、規制は車種別ではなくメーカー全体を対象としている。達成できなければ高額な罰金の支払いもあるため、国内、欧州自動車メーカー問わず対応に乗り出している。

  近年、欧州自動車メーカーの間でプラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)を導入する動きが活発になっているのは、このCO2規制へ向けた対応なのだ。前述したガソリン車、ディーゼル車禁止の動きとは別の動きということだ。

  ボルボは2019年以降、ジャガーランドローバーは2020年以降、新規で販売するすべての車種をEVやPHVなど電動化モデルすると発表。

  ボルボカージャパンは早くも2020年8月25日、日本で販売するボルボ車のすべてを電動車、つまりマイルドハイブリッド車もしくはPHVとすることを発表した。

  VWは2018年9月にEV専用プラットフォーム、モジュラー・エレクトリックドライブ・マトリックス(MEB)を初公開、EV化に特化したサブブランド、ID.を展開している。セダンのID.3はすでに欧州で販売され、続いて2020年9月にはSUVのID.4を発表した。

  VWは2025年までに100万台のEVを生産し、将来的にはグループ全体で1000万台のEVを生産するとしている。日本でのID.ブランドの展開は2022年以降を予定している。

  メルセデスベンツは電動車に特化したサブブランド、EQを立ち上げ、2022年までにEVを10車種以上導入し、2033年にはEVとPHVの比率を50%にするとしている。

  2019年8月に日本導入されたEQCをはじめ、EQV(Vクラス)、EQA(GLA)、EQS(Sクラス)などEQモデルを続々と登場させる予定だ。

  BMWは2011年にEV専用のiブランドを展開。今後、iX3をはじめとして、iXやi4など、2025年までにEVを12車種、PHVを含めると25車種を投入する予定。

  また、BMWは2030年までに700万台以上の電動車(EV、PHV)を販売する新たな計画を発表、700万台の3分の2(約470万台)をEVとすることを目標に掲げている。

 ※電動車=電気自動車(EV)ではなく、電動車とはハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)を指す。

  トヨタは2017年12月に掲げた「2030年に向けた電動化戦略」では、2020年にEVを本格的に展開し、中国を皮切りにトヨタ、レクサスの両ブランドを日本、インド、米国、欧州に市場投入。

  2020年代前半には10種類以上のEVを導入し、2025年頃までに販売する全車種に電動車をグレード展開、グローバルで販売する全車種を電動専用車もしくは電動グレード設定車とする。これにより、エンジン車のみの車種はなくなる。

  2030年にはトヨタで新車販売するクルマの50%以上を電動車(HV、PHV、EV、FCV)として、そのうち10%以上はEVやFCVにする計画とした。

  2019年6月7日、「EVの普及を目指して」と題した電動化戦略の発表会では、電動車を世界で550万台以上販売し、そのうちEVと燃料電池車を100万台以上とするという、前述の2017年に掲げた目標の達成時期を2030年から2025年に早めている。

  日産は2020年5月、中期経営計画を発表。そのなかで今後18ヵ月の間に12の新型車を投入し、2023年度末までに、新たにEV2車種とe-POWER搭載車両 4車種を追加するとしている。

  ホンダは、2030年をめどに世界販売台数の3分の2を電動車とする計画(EV +FCVで15%、HEV+PHEVで50%)。

  欧州では2022年までに販売するすべての車両を電動化、中国市場には2025年までに20機種以上の電動車モデルを投入すると発表している。

  また、2020年4月に発表されたGMとのEVプラットフォームを共用したEVモデルの新開発にも注目が集まる。2024年モデルイヤーとして、2モデルを米国、カナダに投入することを明らかにしている。

  マツダは2030年に生産するすべての車両に電動化技術を搭載すると発表した。さらにロータリーエンジンを発電用に使うEVを2022年前半から順次市場に投入していくという。

  スバルは2030年に生産するすべての車両に電動化技術を搭載すると発表した。

  また、スバルはトヨタと2019年6月、中、大型乗用車向けのEV専用プラットフォームおよびEVのCセグメントのSUVの共同開発することを発表。

  このトヨタとの共同開発車のEVを2020年代前半に投入し、トヨタのTHSを搭載したストロングハイブリッド車を2020年代半ばに登場させるという。

  今後、各自動車メーカーのEVシフトが加速していきそうだ。動向から目が離せない。

最終更新日:11/22(日)13:51 ベストカーWeb

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6377228

その他の新着トピック