モノを購入するときに、消費者にとって価格は最重要ポイントだろう。同じ商品やサービスなら、より安く購入したいのは当然だ。そうした消費者の意向は売る側のマーケティングにも大きな影響を与える。
例えば、5千円で売りたい商品があるとき、単に「5千円」と表示するより、「特別価格5千円」とか、「定価1万円を50%オフの5千円」という表示をする場合がある。定価や通常価格と称した価格と実際の販売価格の双方を示し、安さを強調する価格表示はよく見られる。これを「二重価格」という。
下取り品の古さ、メーカー、故障の有無にかかわらずどんなものでも下取りをするというもの(業務用は除外などの一定条件はある)だが、家電リサイクル対象商品についてはリサイクル料金+収集・運搬料金を、それ以外の製品は小物だと500円程度の下取り手数料を支払うことで大幅な値引き価格で購入できる。
下取り品があると購入商品が安くなるという取引で従来からあるのは、自動車販売の場合だろう。今、乗っている自動車を下取りに出して新車を購入するという買い替えはよくある。その場合の下取り価格とは、下取りに出す車を中古車市場での価値に基づいて査定して下取り価格を決め、その価格分を新車の購入価格から値引くというものだ。
下取り値引きの場合は、実際に下取りなしの価格設定が事実であれば問題はないと消費者庁は判断していると思われ、この問題で同庁が措置命令(旧・排除命令)を出したことはない。立教大のゼミで当時、公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会に問い合わせたところ、「下取りなしの価格と下取り価格の両方の価格で実際に販売をしていれば有利誤認には該当しない」との回答を得ている。
要するに、下取り価格を設定している販売会社としては、下取り品があるときには大幅値下げをすると表示することにより、買い替え需要を喚起し、買い替えでない消費者が値引きなしの販売価格による購入を敬遠するとしても、結果として購入者が増えるということを期待した販売戦略だろう。
通販番組内でテレビとズワイガニについて「セール価格」と将来の販売価格である「明日以降価格」を併記して紹介したことが処分の対象となった。セール後に「明日以降価格」で販売した期間が短期間で、将来価格として表示することは問題があり、有利誤認と認定した。将来価格の表示に対する初めての処分となった。
ズワイガニは、過去の番組で実施したセール企画「食の祭典! 24時間グルメ祭り」において、
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筆者の経験だが、勤務する日本女子大学のゼミで飲み会をすることになり、学生が50%引きのクーポン券利用で2500円で飲み放題の店を探してきたことがある。料理は質も量もひどいもので、初めから2500円の価格設定としか思えず、クーポン発行会社にクレームを入れたことがある。発行会社は一応、当該居酒屋にヒアリングしたようで、たしかに5000円のコースを値引きしているということであった。覆面調査でもしない限り、本当のことを言うわけがないだろう。
最終更新日:10/14(木)11:41 東洋経済オンライン