町工場が本気で作ったのは、おにぎりの“具”を抜くためのマシン。それがモノづくりのプロたちが「自社技術を駆使して作ったくだらないもの」を競うコンテストで優勝した。
注目を集めたのは、製缶・鈑金業を営む「千成工業」(愛知・小牧市)。
従業員数13人のこの町工場が開発したのが「グナッシ~」というマシン。おにぎりの具を抜くための機械で、それもコンビニおにぎり向けだという。名前は「具なし」というだじゃれだ。
使い方を簡単に説明すると、グナッシ~は上型と下型に分かれていて、まずは三角形の下型におにぎりをはめ込む。おにぎりが切れやすいよう、上型と下型には刃が付いている。
そして気持ちの準備ができたら、上型をあてて突起した中心部をプッシュ!
すると、上型と下型でおにぎりが挟まれ、刃でくりぬかれた具の部分が下に落ちる仕組みだ。
おにぎりのためにここまでする?と思うかもしれないが、これは、モノづくりのプロが「くだらなくて笑えてしまう一品」を本気で作り、出来栄えを競うコンテスト「くだらないものグランプリ」のために作られたもの。
このコンテストは2021年が第2回の開催で、19の企業がエントリー。千成工業は事前投票と10月2日の決戦投票の合計で、トップとなる793ポイントを獲得し、優勝に輝いたのだ。
優勝はお見事だが、コンビニおにぎりの具がいらないなら、塩おにぎりか、最初から好きな具のものを買えばいいのでは?という野暮な指摘もしたくなる。そして、町工場の技術はどのあたりにいかされているのか。千成工業に話を聞くと、意外なストーリーが明らかになった。
――グナッシ~の製造工程とこだわりを教えて。
製造工程は設計後、金属の板をレーザー加工機で切り抜き、曲げたりしていきます。その板をレーザー溶接機でつなげていきます。部品としてはバネや刃があり、バネはホームセンターで買いましたが、刃は鉄板を研いで作りました。
こだわったところはきれいに抜くことですね。具だけを抜いてかつ、おにぎりがきれいに見えるように上型と下型の隙間を減らしたりしました。5~6個の試作を重ねて、完成したのは本番(10月2日)の1、2日前です。
――千成工業の技術を生かしたところはある?
普段の業務でレーザー溶接機を使っていますが、グナッシ~の製作にも役立ちました。レーザー溶接機はひずみを極力少なくしつつ、金属の板を溶接できます。ひずみを少なくすることで上型と下型の固定がうまくいき、おにぎりの中心をきれいに切れるようにできました。
――製造コストはどれくらいかかった?
公表はしていませんが結構な値段です。試作品のためにおにぎりを毎日20個以上試し、みんなで食べる日々も続きました。おにぎり1つ120円だとしても…。おにぎりを食べすぎて体重が5キロ増え、家でご飯を食べられない社員もいました。
最終更新日:10/9(土)12:46 FNNプライムオンライン