「焼き芋」といえば温かい状態のものが主流だが、ことコンビニにおいては、数年前から「冷やし焼き芋」なる商品を見かける頻度が高くなった。思えば、焼き芋を取り扱っているコンビニは少ないが、なぜ各社がそろって「冷やし焼き芋」を取り扱うのだろうか。(清談社 鶉野珠子)
● コンビニエンスストアが 焼き芋を売らない理由
「焼き芋」というと、軽トラックやリヤカーで販売しているイメージが強い人も多いだろう。時代が進んだ今、焼き芋を店頭で販売するスーパーなども増えてきた。さらに驚くことに、最近のコンビニには「冷やし焼き芋」なる商品が登場してきている。その名の通り、焼き芋を冷やしただけの、ごくシンプルな食べ物だ。
「コンビニに冷やし焼き芋が並ぶようになったのは、2018年頃から。同時期に焼き芋専門店でも冷やし焼き芋を取り扱い始め、冷やすことで増す“ねっとり感”が人気になりました。そのトレンドをコンビニもくんだのでしょう。コンビニははやっている商品をいち早くピックアップして店に置くのが得意ですからね」
そう解説するのは、コンビニ研究家の田矢信二氏。だが、コンビニが焼き芋ではなく、あえて冷やし焼き芋を置く理由とは、いったいなんなのだろうか。
● カップスイーツとして 定番化の可能性も
見た目とサイズが合格値に達しているさつまいもを仕入れるだけでも難しいのに、さらに産地と品種までクリアしたものを探すのは、かなり至難の業だ。しかし、この仕入れの問題さえ解決すれば、冷やし焼き芋はコンビニの一軍商品に入れるかもしれない。田矢氏も「ポテンシャルのある商材だと思います」と語る。
「冷やし焼き芋は、アレンジがしやすい食べ物であることも魅力のひとつです。専門店でよく見かけるようにバニラアイスを乗せて食べたり、ジャムやクリームのようにパンに塗って食べたりできます。シンプルだからこそ、さまざまな食材と合わせやすい。幅広いアレンジが可能なことは最近のトレンドグルメの秘訣(ひけつ)だと思います」
前述の特長も踏まえ、冷やし焼き芋は今後、どのように成長していくのだろうか。
「あくまで個人の予想ですが、スイーツのポジションで進化していくのではないでしょうか。丸々1本をそのまま使うのではなく、プラカップに入るサイズに切ってカップスイーツとして販売すれば、さつまいも自体の見た目や大きさにはそこまでこだわらなくてもよくなります。専門店ではやっているような生クリームをトッピングしたものなど、人気が出そうな気がしますね。最近では、セブン-イレブンが『7プレミアムまるで濃蜜芋」というアイスを発売しているので、秋冬はアイス売場も活性化するかもしれません」
冷やし焼き芋の購買層は、専門店にしろ、コンビニにしろ、女性が主だ。今後スイーツとして展開していくとなると、より女性だけがターゲットになってしまいそうな気がするが、それは杞憂(きゆう)だと田矢氏は指摘する。
「これまでに専門店でブームになってコンビニに登場してきたスイーツと、冷やし焼き芋の大きな違いは、老若男女になじみがあるかどうか。たとえば『マリトッツォ』なんかは名前を聞いただけでは味がイメージできない人も多いでしょうが、『冷やし焼き芋』と聞けば、多くの人が大体の味の想像がつきますよね。冷やしてあるので珍しいですが、そもそもは焼き芋という慣れ親しまれた食べ物なので、たとえスイーツコーナーに置いてあっても性別や年齢を問わずに多くの人々が手に取ると思います」
近年、温暖化の影響で秋でも気温の高い日が続いている。冷やし焼き芋は、涼しげに秋を満喫したい人にぴったりの食べ物といえるだろう。
最終更新日:10/8(金)22:16 ダイヤモンド・オンライン