2021年度(21年4-9月)の倒産件数は前年同期比25.7%減となる2938件となり、2000年度以降で最少、1999年度以前と比較しても55年ぶりの低水準を記録した。持続化給付金など政府による事実上の資本注入策に加え、各金融機関による無利子・無担保融資、既存融資のモラトリアム対応など、考えうる金融支援を総動員した万全の資金繰り対策が行われたことで、業種を問わず経営不振に陥った多くの中小零細企業が「手元資金の枯渇」という最悪の事態を回避し続けていることも、法的整理としての倒産発生を大きく抑え込んだ要因となった。
一方で、負債総額は前年同期から3.8%減少となる5784億7000万円となり、倒産に比べて減少率は小幅に留まった。倒産が減少するなかでも、負債10億円以上の中大型倒産が複数発生。事業再生による旧会社の清算などで負債が大型化した側面もあるものの、コイケ(5月民事再生)やサン宝石(8月同)など、従前から過大な負債を抱えた中でコロナ禍の急激な業績悪化が直撃し、資金繰りが限界に達した業界中堅企業の倒産が発生している。
全国的な倒産傾向としては、微細な増減はあるものの今後も急激な増加はないだろう。4日に発足した岸田政権が、10月末に投開票が行われる衆議院総選挙の行方によるものの、金融支援を中心とした企業支援から経営不振企業に退場を促す内容へと大きく舵を切る事態は短期的に考えづらく、2021年後半にかけても倒産動向は比較的落ち着いた推移をみせるとみられる。
一方で、強力な金融支援が生み出した企業の過剰債務問題といった副作用を、資金面だけでなく本業を含めてどう立て直すかが求められる局面に来ている。金融庁は2021事務年度の金融行政方針において、地域金融機関がコロナ禍で傷んだ中小企業の経営改善や事業再生支援に向けた環境整備を明記した。政府も、中小企業でも円滑に私的整理が行えるガイドライン策定を目指すなど、コロナ禍の中小企業支援は抜本的再生へと主眼が移りつつある。ただ、過去の金融円滑化法で借入金などのリスケを実行した企業のうち、実際に経営改善計画を策定できた企業は3割ほどとされ、今回も自力で経営再建を果たす企業がどれ程に上るかは未知数だ。
足元では半導体や食品など各種原材料、賃金など労務費が上昇する一方、国内消費の停滞で販売価格に転嫁できない状況が長く続いており、特にサービス業や小売業では売り上げの維持や利益確保で精一杯のケースが少なくない。手厚い中小企業支援が倒産を抑制し続ける一方で、将来的な事業再建への道筋が見込めないまま、コロナ支援に依存し続ける経営不振企業が増加する懸念は残ったままであり、これら企業の倒産リスクは依然として燻る状態が続く。
最終更新日:10/8(金)13:30 帝国データバンク