半導体クライシス(危機)の“第2波”がやって来た。2020年末に顕在化した第1波は半導体製造の前工程が集中する台湾起点だったが、今回の第2波は後工程の一大拠点である東南アジアが中心だ。新型コロナウイルスの感染再拡大がサプライチェーン(供給網)の構造的脆弱性を図らずもあぶり出した格好だ。構造的ゆえに第2波の解消にはより時間を要する可能性があり、自動車メーカーなど顧客を悩ます供給不安は長引きそうだ。
特にマレーシアは車載用半導体大手の独インフィニオンテクノロジーズや蘭NXPセミコンダクターズ、スイス・STマイクロエレクトロニクスに加えて、日本のルネサスも後工程工場を構える。ほかに、半導体後工程請負業(OSAT)を手がける地元企業もおり、最近の新型コロナ感染拡大が後工程の一大集積地を直撃した。
トヨタ減産の一因はSTマイクロのマレーシア工場の操業停止と言われるが、進出企業はどこも当局から大小さまざまな操業規制を断続的に受ける。ルネサスは現時点で通常稼働しているようだが、同国で感染が深刻化した21年春以降、操業停止や従業員の出社制限などに従ってきた。今後も予断を許さない。
経済合理性から長年かけて構築された世界の半導体分業体制。労働コストを軸に考えれば、後工程のサプライチェーン再構築の難易度は高そうだ。アジアの他国へ移転できたとしても感染症の脅威は等しくやって来るため、地球上に逃げ場はない。
第2波の陰で問題が大きくなりつつあるのが半導体製造装置の長納期化だ。車載用ほど目立たないが、ルネサスの工場火災などにより、半導体を使用するあらゆる機器の生産に支障が出始めた。その中でも、特に需要が旺盛な半導体製造装置の部材不足の被害はより深刻だ。
TSMCや韓国・サムスン電子、米インテルなど世界大手は設備投資を急ぐが、装置の調達難が増産ペースにブレーキをかける恐れがある。世界的な半導体不足の解消は22年以降との見方が大勢だ。しかし、新型コロナのように半導体危機の第3波、第4波、第5波の可能性も否定できない。
最終更新日:9/23(木)9:48 ニュースイッチ