世代問わず、不動の人気を誇るアイスクリーム。コンビニやスーパーには多種多様な商品が並べられている。とりわけ、コロナ禍で新たに需要が高まったのが「ちょっと贅沢なアイス」だ。高級感あるパッケージや濃厚な味わいなど、ちょっとリッチな気分に浸れるアイスとして注目されている。
そんななか、大手食品メーカーの森永乳業が出す人気商品「MOW(モウ)」も、昨年9月から厳選素材にこだわった「MOW PRIME(モウ プライム) 」を発売した。今回は同社のマーケティング統括部 冷凍事業マーケティング部マネージャーの柳迫さやか氏に、MOWブランドが長年愛されてきたワケや今後の展望について話を聞いた。
しかし、乳業メーカーという意地をかけ、MOWが提供できる付加価値を考え直し、再起をかけるべく2015年に大幅なリニューアルを敢行した。リブランディングをしたからと、必ずしもV字回復できるという保証はない。リスクを背負ってでもリブランディングを行なった経緯を次のように話す。
「カップアイス市場は非常にボリュームがあり、まだまだ伸びしろがあるマーケットでしたので、10年以上継続してきたMOWを終売してしまうのはもったいないと思いました。そこで、MOWのブランド価値をもう一度、ゼロから考え直し、MOWの特徴であるミルクのコクや手づくり感をどう訴求すれば、お客様へ伝わるか試行錯誤しました。
リブランディングは『守るべきもの、変えるべきものは何か』を決める。つまり、成功する青写真を描きながら、取捨選択していく必要性があるということです。当時の担当者からは『立て直せるかどうかは未知数で、半ば挑戦する気持ちで取り組んだ』と聞いており、勝算よりもチャレンジ精神で実施したというのが、リニューアルした背景になっています」
2020年9月にはMOWシリーズの新商品として「MOW PRIME(モウ プライム)」を発売している。コロナ禍で増える巣ごもり需要やプチ贅沢志向に沿ったプレミアムな商品として、世間で認知が広がっているが、実は「ブランド側としてはプレミアム路線で打ち出したものではない」と柳迫氏が説明する。
「おかげさまで、メディアに取り上げていただく際は、MOWのプレミアム版と位置づけて露出されることが多いんです。でも、あくまでブランド側のコンセプトとしては『ミルクのおいしさを追求したアイス』と『厳選した素材感のある具材』とのマリアージュが楽しめるアイスとして打ち出しています。特に主力であるMOWのバニラアイスと対比させたプレミアム版とは意識していません。
ネーミングに関しても、デコレーションやトッピングなどの候補も挙がりましたが、至福の時間(PRIME TIME)の語源を参考にPRIMEを採用しました。アイスと素材との味の広がりを楽しめる日常のちょっと贅沢なスイーツを提供したいという想いのもと、アイスを食べるオケージョンや、さらなる需要の拡大を図るために“新スイーツアイス”と銘打って展開しています」
アイスの美味しさのみならず、おうち時間での息抜きや自分へのご褒美といった情緒的な側面も、より大切になってくるのではないだろうか。最後に柳迫氏へこれからの事業展望について聞いた。
「MOWブランド全体としては熱いファンをもっと増やし、メーカー側ではなくお客様が自発的に発信していけるような取り組みを行っていきたい。MOWは20年度iTi(国際味覚審査機構)から『優秀味覚賞 三ツ星』をいただいたのですが、第三者からのお墨付きをSNSプロモーションと絡めた『プロMOWションチャレンジ』を実施しました。お客様がMOWを支持しているのをどう可視化していけるかが重要だと考えています。
MOW PRIMEに関しては、引き続き若い世代に向けたコミュニケーションを行いつつ、お客様が買いやすい場所に商品を並べられるかが鍵となります。今はまだコンビニへの配荷率が低いので、若い世代への導線を増やせるよう尽力していきたい」
一時は落ち込んだMOWが再浮上し、アイス市場の活性化を担うブランドへと進化した。MOW PRIME含め、今後どのようなフレーバーが発売されるのか注目したい。
<取材・文・撮影/古田島大介>
最終更新日:9/22(水)8:47 bizSPA!フレッシュ