米中枢同時テロから11日で20年となる。沖縄県内に集中する米軍基地絡みの「風評被害」で、修学旅行が軒並みキャンセルになるなど沖縄観光は大きな打撃を受けた。その後、観光客は回復し、県の主幹産業として成長を続けてきたが、昨年からの世界的な新型コロナウイルス感染拡大で、かつてない観光客の落ち込みに直面している。繰り返される観光危機にどう向き合い、備えるべきか。業界からは危機管理のための基金創設を求める声もある。(政経部・伊禮由紀子)
■翁長由佳氏 サンダーバード社長(観光危機管理)
離島県の沖縄は、人の移動が空路や航路に頼らざるを得ず、県外で起こる事象もダイレクトに観光産業に影響を与えることがある。テロや感染症、自然災害などそれぞれの危機で対策は異なるが、共通しているのは正確な情報を迅速に発信することだ。官民が一体となった初動の早さが、影響を最小限に抑えて、その後の回復につながる。
ただ、今回の新型コロナウイルス感染拡大は、世界的な流行が長期化している点でこれまでの危機管理の想定を超えている。感染症の対応では、医療崩壊を防ぐことが大前提となる。しかし、その中でも復興につなげるための誘客をどう図るかは並行して考えなければならない。
コロナの感染拡大が続く中、観光に対するマイナスの県民感情を懸念する声があるが、業界が取り組む感染対策などを観光客だけでなく、県民に向けても発信し、地域に正しく理解してもらう働き掛けが必要ではないか。それが観光の安全安心にもつながる。そのために、地域の観光協会との連携も大切だ。
他の観光地もコロナ収束後のマーケット獲得のためにさまざまな対策を練っている。観光施策に対する予算を確保し、沖縄に観光客を戻すためのオンラインによる魅力発信や、旅行気分を味わえる県産品のPRに対する助成なども必要だ。
最終更新日:9/11(土)20:18 沖縄タイムス