新型コロナウイルスの感染拡大で「まん延防止等重点措置区域」に指定され、午後8時までの営業時間短縮と酒類提供の停止要請が続く熊本市。しかし、要請に応じない飲食店は後を絶たず、一部では密な状態でにぎわいを見せる店すらある。コロナに翻弄[ほんろう]される夜の街を歩いた。(河内正一郎、久保田尚之)
9月最初の週末となった3日午後9時すぎ、熊本市の中心繁華街。若い男性が「お酒飲めますよ」と声を掛けてきた。近くの看板には「生ビール」の文字。男性を通じて経営者に取材を申し込んだが、「世間の目がある」と断られた。
下通アーケードの人影はまばら。スナックの看板が輝くビルも中に入ると真っ暗だ。それでも営業している店は居酒屋、ガールズバーなど20軒ほど見つかった。
看板を出している飲食店をのぞくと、カウンターはほぼ満席。別の店では小さなテーブルを若者が囲み、アクリル板なしで談笑中。さらに別の居酒屋では、店員がマスクも着けずに接客していた。感染防止対策が徹底しているとは言い難い。
飲食店経営の男性(52)は「近隣の店と折り合いが悪く、こっそり開けるとたれ込まれる。相手も同じ気持ちで、抑止力になっている」と、“相互監視”が働く夜の街の一端を打ち明けた。
新型インフルエンザ等対策特別措置法では、正当な理由なく要請や命令に応じない場合、20万円以下の過料を科すことができる。県商工政策課は慎重な対応が必要としながらも、「場合によっては検討せざるを得ない」という。
まん延防止等重点措置の期限は12日。熊本市の新規感染者数は減少に転じているが、要請の解除時期は、いまだ見通せない状態が続く。
先の飲食店経営の男性が営業できたのは今年に入って4カ月ほど。男性はため息をつきながら、「ルールを守らない店がおとがめなしなら、追随する店も出てくるだろう」と指摘した。
最終更新日:9/5(日)11:05 熊本日日新聞