500円天丼 てんやの原点回帰

今年の夏「東京オリンピック」が開催されていたら、「ニッポンの食文化」にどんな注目が集まっただろう。コロナ禍で五輪が延期(もしかして中止? )となり、外国人観光客の訪日制限が続く現在では、想像するしかないが。



 Sushi(寿司)やRamen(ラーメン)は、例えば「岩国寿司」(山口県)や「喜多方ラーメン」(福島県)など、地域によって形や味が変わるのに興味を持たれたかもしれない。

 こう思ったのは、Tendon(天丼)文化と、それをチェーン展開する「天丼てんや」(以下「てんや」)の存在がある。首都圏を中心に国内約190店舗(うち直営140店舗。2020年6月末時点)があり、海外にも29店舗(同10月末時点)を展開する最大手だ。

 その「てんや」が、かつては期間限定の新商品で訴求した牛肉や豚肉などを使った“変わり種”をやめ、基本食材に原点回帰をしたという。

 コロナ禍で特に都心の飲食店が厳しいなか、どんな思いで消費者と向き合っているのか。関係者を取材し、現在の取り組みを聞いた。

「コロナ以前から『原点回帰』を掲げていたのは、店舗数が拡大し、商品アイテムも増える中、なおざりになってきた部分を見直す思いでした。例えばメニューが多様化すればするほど、調理も接客対応も複雑になり、店舗スタッフに負担がかかりますから」

 こう話すのは、第5営業部部長の青木宣行(のぶゆき)さんだ。

 2人の担当領域は、山崎さんが以前は商品部、現在は東京都心のほか池袋や巣鴨、埼玉県の川越など。青木さんはてんやの海外事業の立ち上げの部長を経て、現在は新宿や浅草などを担当する。

 ともに「てんや」一筋。ロイヤルホストなど他のグループ店舗の勤務経験はなく、その分、天丼への思いも強い。

 日本と海外では価格帯も違う。

 「10月15日にシンガポールにオープンした『TENYA Orchard Central』(天丼てんや オーチャード・セントラル店)は、日本の500円天丼にあたる天丼が約655円です」(青木さん)

 それだけ日本の定番品・500円天丼はお値打ちなのだが、この“一丁目一番地”を他の限定商品などで広げつつ、時に定番に戻すのが同社の顧客戦略だ。

昭和時代、町の食堂メニューの「天丼」は、かつ丼よりも数百円高く、1000円を超える店が多かった。以前、取材でその理由を聞いた際は「当時は冷凍技術も発達しておらず、一般の食堂では手のかかるメニューだった」という答えが返ってきた。

 そんな「町食堂」を知るリタイア世代にも「てんや」は強い。平日午後には、現役時代から利用してきたと思われる年配客が、明るいうちから天丼とビールを楽しむ光景も目立つ。「年金支給日の偶数月15日には、店内が一段とにぎわう」という。

 「持ち帰り弁当のご注文も増え、いつもの天丼より少し価格帯の高いお弁当を頼まれる方もいらっしゃいます。お弁当以外にも『天ぷら盛り合わせ』がよく売れます」(山崎さん)

 年金支給日は、いわばリタイア世代の給料日だ。この日だけは「ちょっぴり奮発」気分が働くのだろう。都内の私鉄沿線の駅前店舗では、平日午後に1人で来店する高齢客も多い。追加で別の具を注文したりしながら食事を楽しむ姿も目にする。

 ちなみにお客の年齢層は男女問わず中高年が多い。30代、40代もいるが、立地によっては50代以上が6割を占めるという。

最終更新日:11/16(月)16:56 現代ビジネス

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6376631

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