東京都世田谷区内を走行していた小田急小田原線の上り電車内で6日夜、20~50代の乗客が刃物で刺されるなどして重軽傷を負った事件で、警視庁は7日朝、川崎市多摩区西生田4、自称派遣社員、対馬(つしま)悠介容疑者(36)を重傷の女性への殺人未遂容疑で逮捕した。
東京オリンピック・パラリンピック大会を前に、国土交通省は鉄道会社による乗客への手荷物検査を可能にする省令改正をするなど警備体制を強化していた。しかし、利用者が多く利便性が重視される鉄道では、通勤客などへの恒常的な検査は難しい。国交省は7日、全国の鉄道会社に警察当局と連携した警備を徹底するよう通知を出したが、対策に限界があるのが実情だ。
国交省は今年6月に省令を改正。鉄道会社による乗客への手荷物検査のほか、検査を拒否した乗客を車内や駅構内から退去させることができるようになった。
しかし、警備の強化は利便性を損なうことにつながる。大会期間中、JR東日本などは首都圏の新幹線や在来線の主要駅で手荷物検査を実施しているが、防犯カメラなどで絞り込まれた不審者に限っている。
走行中の車内で事件の起きた小田急電鉄も、利用者が多い新宿駅やオリンピック会場の周辺駅など計11駅で警備員を増やし警戒を強化していた。ただ、手荷物検査などは実施しておらず、「利便性や検査の方法などの課題があり、具体的な検討はこれから」と同社は説明する。今後は駅員などの巡回を強化し、防犯カメラの映像を確認する頻度を増やす対策を取る方針という。
国交省関係者は「事件が起きたような通勤電車では、手荷物検査の実施は現実的に難しい。駅の防犯カメラを増やしたり、警戒を強化したりする『見せる警備』で抑止していくしかない」と話す。【岩崎邦宏】
最終更新日:8/7(土)22:26 毎日新聞