アニメ制作市場 10年ぶりに縮小

2020年のアニメ業界は、劇場版を中心に多くのヒットがあった。京都アニメーション制作の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は公開直後から多くのアニメファンが映画館に詰めかけたほか、『鬼滅の刃 無限列車編』が国内興行収入400億円を突破するなど好調だった。

 他方、テレビアニメの制作本数は2019年も3年連続の減少となったことに加え、新型コロナウイルスの影響による制作遅延やアニメ放映延期といった問題が制作現場に追い打ちをかけた。さらには、コロナ禍でも高い評価の作品を作り続けてきた中国企業の台頭により、かねてより指摘されてきたアニメーターの労働問題や利益構造といった日本アニメ制作業界の課題が再び炙り出されている。設備や待遇面など多くの面で、中国企業が日本企業の環境と同等かもしくは上回るとされるなか、人材や技術の流出などによる日本アニメの停滞を懸念する声も上がり始めている。

制作態様別に平均売上高をみると、直接制作を受託・完成させる能力を持つ「元請・グロス請」では、2020年の平均売上高は16億9500万円で、前年(16億7500万円)を約2000万円上回った。4年連続での増加となったものの、増加幅は過去4年で最も小さい。「増収」は31.6%、「減収」は48.2%で、減収割合は昨年(26.3%)から大幅に増加、過去2番目の高水準だった。損益面では、「増益」(37.0%)が最も高く、「赤字」「減益」(ともに31.5%)が続いた。また、「赤字」割合は2017年(32.2%)に次ぐ過去4番目の高水準だった。

 多くの制作企業で、コロナ禍の影響によるスポンサー撤退や出資見送りなども重なり、制作スケジュールに影響が及んだケースが発生した。ただ、自社コンテンツの版権を有する大手元請などでは、動画配信やグッズなどライセンス収入が引き続き利益に大きく貢献し、減収ながらも損益面では黒字や増益となった企業も多い。他方、自社版権を多く持たない中堅以下の元請では、制作本数減による減収に加え、アニメーターの採用・育成やコンピュータグラフィックス(CG)など、従来からの設備投資負担が重くのしかかった。また、質の高いアニメーターなど人材不足の影響による外注費上昇から、作品によっては採算割れが発生するなどした結果、減益や赤字が多く発生した。総じて、制作収入に対して利益が伴わない不安定な収益構造が続いている。

2020年のアニメは、国内興行収入400億円を突破した劇場版アニメ『鬼滅の刃 無限列車編』がとりわけトピックとして目立つ。また、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』など話題作、『名探偵コナン』など定番シリーズも堅調なヒットをみせ、劇場版アニメの人気を下支えした。

 テレビアニメは、30分アニメで『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』『呪術廻戦』などが人気となったほか、コロナ禍でのアウトドア人気を後押した『ゆるキャン△』などが話題となった。他方、近年は『ウマ娘 プリティーダービー』『BanG Dream!』をはじめ、スマホゲームなどと連動した複合メディアミックス型のアニメ制作プロジェクトが広がりをみせており、新たなファン層の獲得や人気の底上げにも結び付いている。

 このように日本アニメの人気が国際的に高まるなか、海外の動画プラットフォーマーや制作企業と取引を行うケースが増えている。アニメ制作企業300社のうち、外注や制作請負などで海外企業との取引が判明した企業は68社、全体の2割超を占めた。このうち、中国企業との取引が最多で、韓国やアメリカ企業との取引も多い。

 近年、Netflix(米)やテンセント、ビリビリ(中)など海外の動画プラットフォーマーらが日本国内のアニメ制作企業に対する関心を高めており、独占配信などの直接契約・取引を行うほか、資本の提供や日本国内で制作スタジオの設立といった動きが目立つ。

最終更新日:8/2(月)14:02 帝国データバンク

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6400490

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